葉酸には、赤ちゃんの神経管閉鎖障害の発症を予防する効果があります。そのため厚生労働省では、妊娠の1ケ月前から葉酸をサプリメントの形で摂取することを推奨しています。

しかしサプリメントと併用して、普段から食事のバランスを整え食べ物から葉酸を補うことも大事です。そうした果物の中でもいちごは非常に手軽です。

そこで今回は、手軽に葉酸が摂取できる食べ物として「いちご」の栄養や効果的な食べ方について解説します。

一粒にどれくらい?妊婦におすすめな、いちごの葉酸含有量について

葉酸の重要性について、母子手帳には重要性が記載されています。以下のような感じです。

ここには、神経管閉鎖障害(二分脊椎など)の予防に葉酸が重要であることや、日頃から緑黄色野菜など葉酸を含む食べ物を摂ることの大切さについて書かれています。

葉酸摂取によって予防できる神経管閉鎖障害とは、妊娠初期に形成される赤ちゃんの脳や脊髄のもとである神経管がうまく形成されない先天性異常のことです。そのうち、神経管の下部に異常が発症した場合を二分脊椎といいます。

二分脊椎になると、損傷の場所により下肢障害や排せつ障害など神経障害を発症します。日本二分脊椎協会によると、神経管閉鎖障害の発症率は現在、分娩10000件に6件です。

そして重要なポイントは、「赤ちゃんの神経管は妊娠初期である4〜5週の間に形成される」ということです。

上の写真は、私が妊娠して初めて頂いたエコーの写真です。胎児はまだヒトの形には見えませんが、9週目に入っています。この頃には、すでに赤ちゃんの神経管は完成しています。そのため厚生労働省では、神経管閉鎖障害を予防するための葉酸摂取時期として、妊娠を望む1ケ月前からを推奨しています。

さらに葉酸は神経管閉鎖障害の予防だけでなく、赤血球を作ったり赤ちゃんのDNAを形成したりする働きも担っています。出産後には母乳の出や産後うつの予防にも関わってくるため、妊娠・授乳期において欠かせない栄養素です。

そうした葉酸を含む食べ物として、母子手帳には具体的に、ほうれん草、ブロッコリー、いちご、納豆との記載があります。

この中でも手軽に葉酸を摂取できるのが、いちごです。葉酸は熱に弱い性質があるため、火で調理することにより栄養素が半減します。その点、いちごは調理する必要がなく栄養の損失が少なくて済むメリットがあります。

ただし葉酸は水に溶けやすい性質もあるため、栄養素の流出を防ぐためいちごはすばやく洗うとよいです。

栄養たっぷり!いちご100g当たりの葉酸量

では具体的に、いちごの葉酸含有量はどのぐらいなのでしょうか。

写真のいちご(小粒9個)の量で、ほぼ100gです。この中に含まれる栄養素は、以下の通りです。

  • 葉酸(90μg):赤血球を作る、細胞分裂を助ける
  • ビタミンC:鉄分の吸収を助ける、美白効果
  • 鉄分:赤血球中のヘモグロビンを作る
  • クエン酸:疲労の原因となる乳酸の蓄積を防ぐ
  • ペクチン:食物繊維の一種、整腸作用
  • キシリトール:虫歯予防になる成分
  • アントシアニン:ポリフェノールの一種、抗酸化作用がある
  • カリウム:細胞の浸透圧を調整する
  • カルシウム:骨や歯の原料
  • マグネシウム:約300種類の酵素の働きを保つのに必要な栄養素

厚生労働省が定める妊婦が1日当たり必要な葉酸の量は、400μgです。したがって、写真の大きさのいちご100g(やや小ぶり)の場合は9個で1日に必要な葉酸の約20%(90μg)を摂ることができます。葉酸含有量は小ぶりのいちご一粒で10μgだと考えればよいです。

またビタミンCについては、いちご100gで1日に必要なビタミンC62mgを摂ることができます。これは、およそレモン1/2個分に当たります。ビタミンCは鉄分の吸収を高めたり、免疫力をアップさせたりする効果があり、葉酸と共に毎日補う必要のある水溶性ビタミンの一つです。

このように妊娠中に必要な葉酸と共に様々な栄養素を摂取できるいちごは、妊婦におすすめの果物です。

葉酸が多い果物は?妊婦にいちごがおすすめな理由

そのほかいちご以外にも、以下の通り葉酸を多く含む果物があります。

【可食部100g当たりの葉酸の含有量】

  • ドリアン(150μg)
  • ライチ(100μg)
  • アボカド(82μg)
  • ドラゴンフルーツ(44μg)

ドラゴンフルーツ以外は、いちごよりも葉酸が多いです。しかし、いちごのカロリー34kcalに比べてドリアン133kcal、アボカド187kcalとカロリーが高めです。ライチやドラゴンフルーツはいちごに比べて手に入りにくい上、皮を剥く必要があります。

その点いちごは、カロリーも低く、食べたいときに洗ってすぐに食べることができる良さがあります。いちごは新鮮なうちに食べたほうが、栄養価が減らずおすすめですが、冷凍も可能です。

ただし冷凍したいちごは解凍する過程で、水分が出て味が落ちるため半解凍状態で食べるか、もしくはいちごシェイクなど潰して食べる方法が主になります。その際、砂糖などを加えると余計な糖分を加えることになります。また、冷たい状態で食べると寒い季節は体を冷やしかねません。

以上の理由から、妊婦は葉酸摂取のために新鮮ないちごをサッと洗って、そのまま食べるのがおすすめです。

いちご一粒で約10μgの葉酸を摂取することができます。妊娠中のデザートやおやつとして、ぜひ上手に取り入れてみてください。

いちごジャムはNG!妊娠中にいちごを摂るデメリット

しかし、妊婦がいちごを食べる時に気をつけたいことがあります。それは食べ過ぎないということです。葉酸を始めとする様々な栄養素を含むいちごですが、糖分も多く含んでいます。実際にいちご100gには糖分が7gほど含まれています。

妊娠中はホルモバランスが不安定なため、ただでさえ血糖値が上がりやすい状態にあります。そのため果物などの糖分を毎日過剰に摂ることで、高血糖(糖尿病)のリスクが高まってしまいます。

妊婦の糖尿病は、巨大児が生まれたり難産になったりするきっかけになることがあります。また最悪の場合、胎児死亡に至る場合もあるため注意が必要です。

仮にいちごのみで、妊婦が1日に必要な葉酸を賄おうとすると450g食べる必要があります。いちごひとパックがおよそ300gなので、いちごをひとパックと半分、個数に換算すると50個近く食べる計算になります。

糖分の量は、単純計算で30g以上です。この量のいちごを摂取すると、確実に糖分過多になります。さらに葉酸は水に溶け出したり体内での吸収率が半減したりする特性があるため、実際はもっと多くの量を食べる必要があります。

そのほか、いちごなど果物の過剰摂取は水分過多により体を冷やし過ぎてしまう可能性もあります。体が冷えると免疫力が低くなり、風邪などの病気になりやすくなります。

また、いちごを加工したジャムにも葉酸は含まれていますが、ジャムに加工することで糖分過多のリスクはより高くなるため、おすすめできません。

さらにいちごジャムは熱を加えて作られるため、熱に弱い葉酸はかなり減っています。実際、いちごジャム一食分(20g)から摂取できる葉酸の量はごく僅かで、妊婦が1日に必要な葉酸の2%ほどです。

いちごは葉酸を多く含む食品です。しかしいちごのみで妊婦が1日当たりに必要な葉酸400μgを補うのは、やはりデメリットが大きいといえます。

妊娠中の葉酸摂取は葉酸サプリメントも活用する

そこでおすすめの方法は、いちごなどの葉酸を含む食べ物と併用して葉酸サプリメントを活用することです。様々な種類の葉酸サプリメントがありますが、余計な糖分や添加物を含まない商品を選ぶことが大事です。

以下は、ドラッグストアに1ヶ月当たり250円ほどで売られている葉酸サプリメントの原材料名です。

最も多い成分が麦芽糖です。これは、サプリメントの形状を整えるために加えられているもの(賦形剤)であり、むしろない方が良いものです。いちごに含まれる糖分を回避するためにサプリメントを利用しても、このように糖分の多いサプリメントでは、逆に高血糖などのリスクを負うことにもなりかねません。

同じくデンプン、結晶セルロースも賦形剤であるため健康効果には関係がありません。

さらに染色体異常の発症が懸念されているショ糖脂肪酸エステルや光沢剤としてカイガラ虫の分泌物(シェラック)が使用されています。妊娠中は、口にしたものが胎盤を通じて赤ちゃんへ届けられます。そのため、少しでも余計なものを摂らないことが大事です。

次の写真は「ベルタ」という葉酸サプリメントの成分です。

麦芽糖などの糖分は含まれていません。その分、味に甘みはなく少し酸味があるような感じです。こうした糖分が含まれていないサプリメントであれば、いちごのように糖分過多や冷えを気にしなくて済みます。

また表面をなめらかにするための光沢剤も入っていないため、舌触りも少しザラザラした感じです。しかし私は、毎回、葉酸サプリメントを水で飲んでいたため、味や舌触りについてはほとんど気になりませんでした。

そして上記の商品の場合、天然素材を多く使用している分、ドラッグストアで売られている商品よりも値段が高くなります。しかし母子の健康のために妊娠中は安全を最重要視して、高品質の葉酸サプリメントを選ぶことをおすすめします。

まとめ

いちご(小粒9〜10個)で妊婦が1日に必要な葉酸400μgのうち、約20%に当たる90μgを摂ることができます。そのほか、いちごには鉄分や1日に必要なビタミンCも含まれています。

葉酸は熱や水に弱い性質があります。しかし、いちごは熱を通す必要がない上、サッと洗うようにすれば水に栄養素が流れてしまうのを防ぐことができます。いつでも、すぐに食べることができる点もおすすめです。

ただし食べ過ぎると糖分過多になったり、冷えを招いたりするもあるので注意が必要です。仮にいちごのみから1日分の葉酸を補うためには、450g(小ぶりなら50個以上)のいちごを食べる必要があります。この量を毎日食べるのには無理があります。またいちごジャムにも僅かに葉酸は含まれていますが、それ以上に砂糖が多く糖分過多の懸念があるためおすすめできません。

したがって食べ物と併用して、葉酸を厚生労働省の推奨するサプリメントで葉酸を補う方法がおすすめです。しかしドラッグストアにある葉酸サプリメントはおすすめできません。糖分や胎児への影響が指摘される成分が入っていることが多いからです。

赤ちゃんと自分のために安全面に考慮した妊婦用の葉酸サプリを選びましょう。食べ物と併用して、摂取量を守った上でサプリメントからも上手に葉酸を摂ると安心です。