葉酸は、妊娠初期に形成される赤ちゃんの神経管閉鎖障害の発症を予防する効果があります。そのため葉酸の重要性について、2002年から母子手帳にも記載されるようになりました。

このとき、「野菜から葉酸を摂取するために、ほうれん草の葉酸含有量を知りたい」と考える妊婦は多いです。

そもそも葉酸は1941年にアメリカのMichel博士によって、ほうれん草から発見された栄養素です。ラテン語の「葉(folium)」をもとに「葉酸(folic acid)」と名付けられました。母子手帳にも、葉酸を含む食べ物の一つとしてほうれん草が挙げられています。

そこで今回は「ほうれん草の葉酸含有量はどのくらいか」、さらには「おすすめの調理法やレシピ」について解説していきます。

シュウ酸を取り除き、茹でたほうれん草から葉酸を摂取する

ほうれん草の旬は11月から2月です。しかし夏撒き用の品種が出回っていたり、ハウス栽培が可能になったりしたことにより、1年中スーパーで見かけます。

ほうれん草は、前述の通り葉酸発見のきっかけになった野菜です。そして葉酸のほかにも鉄分、ビタミンC、カルシウムなどを含んでおり栄養価が高い野菜の1つです。

しかしほうれん草には、シュウ酸も多く含まれています。シュウ酸は、血液中のカルシウムと結びついて結晶を作る性質があります。この結晶が大きくなると、尿路結石を招く可能性があります。参考までに、野菜100g当たりのシュウ酸量を示すと以下のようになります。

  • ほうれん草800mg
  • キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、レタス300mg
  • サツマイモ250mg
  • ナス200mg
  • 大根、小松菜、カブ50mg

これを見ると、ほうれん草のシュウ酸量は断トツで多いことがわかります。そのため、ほうれん草はサラダ用でない限り生で食べないほうが良いです。調理の際は、必ず茹でて余分なシュウ酸を落としてから使うようにしましょう。

このとき、以下のようにします。

【ほうれん草の茹で方】

1. さっと水洗いをする。このとき根の部分を広げて、土を落とすように洗うと汚れが落ちやすい。

2. 根本の部分に十文字の切り込みを入れる。こうすると、火の通りが良くなる。

3. お湯の中に塩を入れ、30秒から1分を目安に茹でる。塩を加えることでクロロフィル(緑色の色素)の流出を防ぎ、色止めになる。

4. 水にさらしてよく洗い、ざるに上げる。

茹で時間については、栄養素の流出を防ぐために最小限が望ましいです。さらに食感を考慮すると、30秒から1分を目安にするのがおすすめです。茹で時間が短すぎるとシュウ酸をきちんと落とすことができません。

シュウ酸は茹で時間が長ければ長いほど、除去できます。尿路結石症診断ガイドライン(2013年版)には、「3分茹でることで、シュウ酸の除去量は37~51%になる」との記載もあります。

ただし3分も茹でると、ほうれん草はくたくたになります。ほうれん草をペーストとして使う場合は良いかもしれません。しかし、おひたしなどで食べる場合は水っぽくなるため味が落ちます。

また茹でれば茹でるほど、水や熱に弱い葉酸も流出することにもなります。そのため適度な食感も考慮すると、やはり茹で時間は30秒から1分が良いです。

茹であがったほうれん草は一度水にさらしてよく洗い、しっかり絞ってから使うようにします。そうすることで、茹で汁についている余分なシュウ酸を落とすことができます。そのためこの作業は、省かずに必ずやるようにしてください。

茹でたほうれん草100gの葉酸含有量

では実際に、茹でたほうれん草100gにはどのくらいの量の葉酸が含まれているのでしょうか。

文部科学省の「食品成分データベース」では、あらゆる食品の栄養価を知ることができます。このデータベースによると、茹でたほうれん草100gには、110μgの葉酸が含まれています。

妊婦が1日に必要な葉酸は400μgです。したがって、ほうれん草で1日分の葉酸を賄うためには、写真のおよそ4倍に当たる400g弱の茹でたほうれん草を食べる必要があります。

さらに茹でたほうれん草は30%ほどかさが減るため、実際には570gほどのほうれん草を用意する必要があります。ほうれん草の1束がおよそ200gであるため、ほうれん草のみで賄おうとすると、2束と半分ほどのほうれん草が必要です。

栄養価についてほうれん草の旬は冬であるため、寒い時期のほうれん草の方が栄養価は高いといわれています。しかし実際、冬に栄養価が増えるのはビタミンCのみです。葉酸や鉄分の含有量に、季節による違いはありません。

実際の栄養含有量は以下の通りです。

【茹でほうれん草100g当たりの栄養素】

夏採り冬採り
葉酸110μg110μg
鉄分0.9mg 0.9mg
ビタミンC10mg 30mg

このことからも、ほうれん草は年間を通じて葉酸摂取のために食べたい野菜の一つといえます。

しかし前述の通り、ほうれんそうのみから妊娠中に1日に必要な葉酸400μgを摂取しようとすると、かなり量が多くなってしまいます。そのため、実際にはほうれん草のみでなく、そのほかの食べ物からも意識して葉酸を摂る必要があります。

ほうれん草の保存・冷凍時を使うと効果的

しかし工夫することで、より多くのほうれん草を摂取することができます。おすすめは、茹でて下処理したほうれん草をタッパーに入れて常備しておき、様々なメニューに少しずつほうれん草を加える方法です。

この状態で冷蔵庫に入れると、2〜3日は持ちます。妊娠中はお腹が大きくなることで、台所に立つのが難しくなることがあります。そんなときにも、茹でたほうれん草があると調理に使い回しができ、葉酸も摂取できるためおすすめです。

茹でたほうれん草の活用例は以下の通りです。

  • もみのり、かつお節、胡麻、醤油などをかけて、簡単なおひたしにする
  • 味噌汁やスープの中に入れる
  • 煮物の青みとして添える
  • 煮魚の付け合せにする
  • 炒め物に使う

ほうれん草は下茹でさえしておけば、このように使い回しがきくので、大変便利です。また忙しい方は、まとめて茹でて冷凍することも可能です。

冷凍するときは、「1回当たりに使うであろう量」ほどに小分けにしてラップでくるみます。さらには水分が抜けだしたときのために、ジッパー付きの保存袋に入れておくと安心です。この状態で、約1か月保存できます。

使うときは自然解凍か、もしくはサッとお湯にくぐらせてから使います。ただし、栄養価については以下の通りになります。

【ほうれん草100g当たりの葉酸含有量】

  • 茹でた場合110μg
  • 冷凍の場合57μg

冷凍すると、葉酸量はおよそ半分に減ってしまいます。しかし、茹でるのが手間で食べないよりは良いと思います。したがって、状況によって上手に冷凍も活用することをおすすめします。

おひたしやスープ、スムージーは?おすすめ調理方法・レシピ

このときメニューとしては、おひたしが一番簡単です。茹でたほうれん草のストックがあれば、醤油などをかけるだけで作ることができます。

以下の写真は、茹でたほうれん草にもみのりと醤油をかけただけの簡単なおひたしです。

ほうれん草との食べ合わせでおすすめなのが、胡麻です。胡麻には、以下のような栄養素が含まれています。

【ごま大さじ2杯(20g)に含まれる栄養】

  • カルシウム:牛乳1本分
  • タンパク質:豆腐1/3丁分
  • 鉄分:ほうれん草100g分
  • 食物繊維:生わかめ70g分

中でもカルシウムの多さはトップクラスです。シュウ酸には腸内でカルシウムと結びつくと、吸収されず便として排出される特性があります。そのためほうれん草と胡麻を食べ合わせると、体内でシュウ酸とカルシウムが結合します。その結果、シュウ酸が排出され、体内に蓄積するのを防ぐことができるのです。

したがって定番のほうれん草の胡麻和えは、葉酸とカルシウム摂取、そしてシュウ酸対策にもおすすめのメニューです。

ほうれん草の胡麻和えを作るときは、すり胡麻がおすすめです。胡麻は、皮が固いため栄養を吸収しにくい側面があります。しかしすり胡麻や練り胡麻は皮が破られているため、カルシウムなどの栄養が吸収されやすい状態になっています。

なおスムージーについては、作る過程で刃がほうれん草に当たり空気に触れることで、すぐに酸化が進みます。いまでは、酸化しにくい真空機能の付いたミキサーもあります。つわりのときなど、食事がうまく摂れない時の栄養摂取には役立つのかも知れません。

しかしスムージーは基本的に冷たくして飲むものであり、体を冷やす懸念があります。また飲みやすくするために、どうしてもたくさんの果物(糖分)を入れることが多いです。したがって、妊婦が常飲するのはおすすめできません。

ほうれん草の食べ方として、スムージーよりもスープの方がおすすめです。なぜなら、体をあたためる上、水に溶け出す性質のある葉酸を汁ごと摂取できるからです。簡単なレシピは、以下の通りです。

【ほうれん草スープの作り方】

  1. 鍋にお湯を沸騰させ、固形スープの素を入れておく。
  2. 茹でて刻んだほうれん草と、さっと水洗いした冷凍コーンを入れる。
  3. 塩、こしょう、しょうゆなどで味を調える。

時間のあるときにほうれん草を茹でておくと、使い回しができて大変便利です。おひたしやスープ、味噌汁などいろいろなレシピに加えて活用してみてください。

加熱や茹でることによって損失する葉酸をサプリメントで補う

このように工夫次第で上手に摂取できるほうれん草ですが、やはり調理による葉酸の損失は防ぐことができません。その点について、厚生労働省の報告書に具体的に以下のような記載があります。

調理による損失

葉酸は熱に弱く、調理に際して50パーセント近くが分解するか、水溶性のために茹で汁に溶出するため、調理によって失われやすい。

さらに、体内での吸収率については以下のようになっています。

  • 食品中の葉酸は調理で50%近く失われる。さらにその半分が、体内で吸収される過程で失われる。
  • サプリメントに含まれる葉酸は、食品中の葉酸よりも体内での吸収率が高い(おそよ、1.7倍に当たる)。

このように葉酸は熱や水に弱い性質があり、さらには体内で吸収する過程で半減してしまいます。そのため葉酸を食事から摂取するためには、かなりの量を食べる必要があります。例えば前述のほうれん草の場合、茹でたものを1日400gほど食べる必要があります。

ほうれん草だけでなく、そのほかの食べ物からも葉酸を摂るとしても、葉酸を含む食べ物を毎回気にして摂取することは精神的な負担にもなりかねません。実際に私も妊娠中は栄養を摂取することがストレスとなり、赤ちゃんへも影響するのは良くないと考えました。そこで葉酸を食べ物と併用して、葉酸サプリも活用することにしました。

この併用摂取が結果的には、ストレスもなく効率的に葉酸を摂取し、赤ちゃんを無事に出産することに通じたと思っています。また産後の回復や母乳育児も順調だったため、葉酸サプリが随分役に立ったと感じています。

また厚生労働省は保健医療関係者に対しても、妊婦への葉酸の情報提供の在り方について以下の通り、通達を出しています。

食品からの葉酸摂取に加えて、いわゆる栄養補助食品から1日0.4mg葉酸を摂取すれば、神経管閉鎖障害の発症リスクが集団としてみた場合に減少することが期待できる旨情報提供を行うこと。

つまり普段の食事に加えて葉酸サプリメントを1日当たり0.4mg(400μg)摂ることで、神経管閉鎖障害の発症リスクが減ることを妊婦に指導するよう国が要請しているのです。

そのほか葉酸は神経管閉鎖障害の予防になるだけでなく、赤血球をつくる働きがあるため、妊婦の貧血を防ぎ、母乳の出も良くする効果があります。そのため、妊娠、授乳期において重要な栄養素です。

葉酸を効率的に、無理なく摂取することが大事です。そのために食品と併用して、上手に葉酸サプリメントを活用してみることをおすすめします。

添加物の入っていない葉酸サプリを選ぶ

ただし、葉酸サプリメントならどれでも良いわけではありません。値段もピンからキリまであり、同様に品質も様々です。

安全性を確認するには、成分をチェックすることをおすすめします。実際ドラッグストアで購入できるもののほとんどの商品には、糖分がたくさん入っています。これらはコストを下げ、形を整える目的で使われています。

そのほか安全性の確認されていない成分が含まれている場合もあり、おすすめできるものはほとんどありません。具体的には、以下のような添加物が含まれています。

  • 脂肪酸エステル:乳化剤。染色体異常の発症が懸念されている。
  • 光沢剤:ラックカイガラムシの分泌物が使われている。
  • 甘味料:麦芽糖などがかさ増しのために使われている。

そのほか商品によっては食べやすくするよう、人工的な香りや色をつけているものもあります。妊娠中は、食べたものが胎盤を通して赤ちゃんへ届けられます。そのため極力、余計な添加物を摂らないことが大事です。

参考までに、ベルタというネットで販売されている葉酸サプリの成分を載せてみます。

21種類の野菜の粉末を使用し、余計な糖分と添加物を含みません。その分、ドラッグストアにある商品と比べると値段も上がります。しかし、安全面と品質は間違いない商品です。

このように成分をきちんとチェックしなければ、いくらほうれん草のシュウ酸をしっかり取り除いたところで、元も子もありません。安い葉酸サプリメントでは、添加物によって赤ちゃんに影響を与える危険性があるからです。

一方で、このような妊婦専用の葉酸サプリを扱うメーカーの製品では、放射線や残留農薬についても検査されているため安心です。

生まれてくる赤ちゃんのために、しっかり葉酸を補って準備しましょう。そのために、ほうれん草などの葉酸を含む食べ物と併用して、安全面に十分配慮した余計な添加物を含まない葉酸サプリメントを活用するのをおすすめします。

まとめ

ほうれん草は、葉酸発見のきっかけになった野菜です。実際、ほうれん草には多くの葉酸が含まれています。茹でたほうれん草100gの葉酸含有量は110μgです。

ただし、尿路結石の原因となるシュウ酸も多く含まれているため、食べる場合は必ず下茹ですることが大事です。茹でたあとは、水にさらしてよく洗っておくと安心です。

下茹でしたほうれん草は冷蔵庫に常備し、胡麻和えやスープなどいろいろなメニューに使い回すと便利です。また小分けして冷凍すれば、1ケ月は保存もできます。ただし、冷凍すると栄養価は半減します。

妊婦がほうれん草のみで1日分の葉酸を賄おうとすると、茹でたほうれん草400g弱を食べる必要があります。また葉酸は加熱や水に弱い上に、代謝の過程で体内での吸収率も半減します。そのため厚生労働省では栄養補助食品(サプリメント)の利用を推奨しています。

サプリメントを選ぶときは、余計な添加物が入っていないかを成分を見て確認しましょう。赤ちゃんと自分のために、安全面に配慮された葉酸サプリを選んでください。そして食べ物と併用として、上手に活用してみましょう。