赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを減らすため、葉酸は重要な栄養素です。神経管は妊娠初期に形成されるため、妊娠前後から意識して葉酸を摂取することが大事です。

また妊娠中期以降においても葉酸は妊婦の貧血予防、妊娠高血圧症候群の予防のために必要な栄養素です。

そのため妊婦は食事と共に、葉酸サプリに含まれる「モノグルタミン酸型の葉酸」を1日400μg摂ることが厚生労働省により推奨されています。

ただ、何でもいいから葉酸サプリメントを選べばいいわけではありません。選ぶための基準があります。そこで今回は、妊婦のための葉酸サプリの選び方について解説します。

モノグルタミン酸型の葉酸は吸収率が良い

葉酸サプリについて、アメリカ、イギリス、中国など諸外国では日本より一足早く国レベルで葉酸サプリの摂取を推奨しています。その理由は、葉酸サプリは吸収率が高いことにあります。

葉酸には、食品中に含まれる葉酸(ポリグルタミン酸型葉酸)とサプリメントに含まれる葉酸(モノグルタミン酸型葉酸)の2種類があります。

サプリメントに含まれるモノグルタミン酸型の葉酸の吸収率は、食品に含まれる葉酸と比べて1.7倍高くなっています。

また葉酸は熱と水に弱い特性があるため、食品からの摂取が難しい栄養素です。そのため食事からの摂取を基本とした上で、サプリメントで葉酸を補うことが推奨されているのです。

ただしモノグルタミン酸型の葉酸は吸収力が高いため、過剰摂取に注意する必要があります。過剰摂取した場合、発熱、蕁麻疹(じんましん)、紅斑、かゆみ、呼吸障害など葉酸過敏症などの症状が出ることが懸念されているからです。また、吸収する過程で肝臓に負担をかける可能性もあります。

したがって厚生労働省の推奨する1日400μgを厳守した上で、効率よく葉酸サプリを摂り入れるようにしましょう。

妊婦におすすめの選び方は、天然素材を多く含むもの

では実際にどのような点に着目して、葉酸サプリを選んでいけばよいのでしょうか。妊婦にとって一番気になるのは、サプリの品質ではないでしょうか。ここでは2つの葉酸サプリメントの原材料名を比較することで、その品質を検証してみます。

まず、1つ目のサプリメントの原材料名は以下の通りです。

乾燥酵母、葉酸含有酵母、もろみ酢粉末、ミネラルイースト、ヨウ素含有酵母、卵殻膜粉末、燕の巣加工品、馬プラセンタエキス末、フィッシュコラーゲン、乾燥野菜粉末(大麦若葉、ケール、ブロッコリー、キャベツ、大根葉、かぼちゃ、さつまいも(紫芋)、チンゲン菜、パセリ、人参、セロリ、苦瓜、ほうれん草、桑の葉、モロヘイヤ、よもぎ、白菜、アスパラガス、トマト、野沢菜、れんこん)、ナンノクロロプシス、乳酸菌末、微細藻由来DHA・EPA油/貝殻末焼成カルシウム、セルロース、ピロリン酸、第二鉄、ステアリン酸Ca、ビタミンC、クエン酸、リン酸カルシウム、ラクトフェリン、ビタミンB6、ビオチン、サンゴカルシウム、β-カロテン、ヒアルロン酸、葉酸、抽出ビタミンE、ナイアシン、パントテン酸Ca、酸化防止剤、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンB12

そのほか原材料に食材を多く使い、21種類の乾燥野菜の粉末が使われています。このことから、より天然成分に配慮したサプリであることが伺えます。

また原材料名の始めに「乾燥酵母、葉酸含有酵母」と記載があります。酵母とは微生物のことです。醤油や味噌などにも含まれ、自然界に存在しているものです。そして葉酸に酵母を含ませた葉酸酵母には、葉酸の吸収率を高めたり体内で留まる時間を長くしたりする効果があります。

ただし葉酸に酵母を含ませたり、天然素材を使用したりするサプリはその分、コストが高くなる傾向にあります。

では、ドラッグストアで購入できるサプリの原材料はどうでしょうか。

麦芽糖、デキストリン/セルロース、ショ糖脂肪酸エステル、ビタミンB6、ビタミンB、葉酸、ビタミンB12

原材料名の中で食品名は麦芽糖のみで、その他はすべて成分名になっています。成分名とは、例えば、デキストリン、セルロース、ショ糖脂肪酸エステルなどです。

このように原材料名に成分名の記載が多い場合は、それだけ添加物を含む商品である可能性が高くなります。

そして原材料名は含有量の多い順に記載されていることから、この商品の場合、一番多く含むのは麦芽糖です。そのため、糖分が多い商品であることがわかります。このとき、麦芽糖が賦形剤(粒の形を調えるために使われる添加剤)として使用されていることも考えられます。

さらにショ糖脂肪酸エステルについては、催奇形や染色体の異常につながるとの意見があるため、妊婦は避けた方が安心です。

健康維持の目的で摂取するとき、気軽に手頃な価格で購入できるのはこの商品の利点です。しかし添加物の過剰摂取につながる可能性もあるため、赤ちゃんの健全な発育のために妊婦にはおすすめできません。ドラッグストアで購入できる安い葉酸サプリは避けましょう。

妊婦用に作られていると安心

参考までに天然成分に配慮した葉酸サプリの会社では、以下の成分が無添加になっていました。

  • 香料
  • 着色料
  • 保存料
  • 香料発色剤
  • 漂白剤
  • 防カビ剤
  • 膨張剤
  • 苦味料
  • 光沢剤

上記の中には、胎児の染色体異常や奇形につながるとの指摘があるものも含まれています。妊婦は赤ちゃんの健全な発育のために継続して葉酸サプリを摂取する必要があるため、これらの成分は避けるべきです。

そして、このように品質に配慮したサプリメントの多くは妊婦用として作られています。したがって原材料名の確認をする共に、妊婦専用に作られているものであればより安心です。

仮に、そうした配慮のない葉酸サプリメントであると、以下のように余計な添加物を日常的に摂取してしまうことになります。

粉末還元麦芽糖、デンプン、デキストリン/結晶セルロース、未焼成カルシウム、クエン酸第一鉄ナトリウム、ビタミンC、ショ糖脂肪酸エステル、シェラック、ビタミンB6、ビタミンB1、葉酸、ビタミンB12

原材料の中で、含有量が一番多いのは粉末還元麦芽糖です。糖分の多いサプリは、血糖値を上げてしまう可能性があります。特に妊娠中は、血糖値が下がりにくいホルモンが分泌され、血糖値が上がりやすい状態であるため注意が必要です。

糖分の次に多いのが、デンプンとデキストリンです。主に結着剤、増量剤として使われ安全性が確認されています。ただしサプリメントの体裁を調える目的で使用されているため、健康効果はありません。

結晶セルロースは植物から採れる食物繊維で、医薬品などにも使われています。しかし、安全性は十分でない可能性があります。また、ショ糖脂肪酸エステルは、染色体異常の発症が指摘されています。光沢剤としては、シェラック(ラックカイガラムシの分泌物)が使われています。

同じサプリメントを選ぶにしても、妊婦や妊娠を希望する妊活女性はこうした葉酸サプリを避けるようにしましょう。

ビタミン類や鉄分が配合されている

妊婦用のサプリメントの選び方として、天然素材に配慮したサプリをおすすめしました。次に確認したいのが、必要なビタミンが含まれているかということです。

なぜならサプリに葉酸が配合されていても、そのまま体内で吸収されるわけではないからです。葉酸が体内で吸収されるためにはビタミンB2、B3、B6、B12、Cなどのビタミン類が不可欠です。

したがって、原材料にビタミン類が含まれているかも確認しましょう。

また妊娠中は赤ちゃんに栄養を運ぶために必要な血液量が増し、妊婦の血液が薄まりやすい傾向にあります。妊婦健診で貧血だと診断された人は、全体の6割にものぼるという調査結果もあります。そのため、貧血予防になる鉄分も含まれているとなお安心です。

特に妊娠前から貧血の自覚症状がある場合は、貯蔵鉄(フェリチン)が妊娠により少なくなることが考えられます。

私は葉酸の必要性を知っていたため、妊娠を計画するときから葉酸サプリを摂取していました。そのため、貧血にならずに元気に過ごすことが出来ました。

仮に産婦人科で貧血を指摘された場合は、鉄剤が処方されます。葉酸は造血にも関わるビタミンですが、そこに鉄分も加わるとなお安心です。

ただ、その鉄剤を飲むことで副作用として気分が悪くなったり、便秘になったりすることもあります。

このように妊婦用のサプリメントは、天然素材を多く使っており、さらにビタミン類や鉄分が配合されているものがおすすめです。

GMPを取得している

原材料を確認したのち、さら信頼できるメーカーであるかを確かめておくと安心です。では、信頼できるメーカーであるかをどのように判断すれば良いのでしょうか。実は、簡単に確認する方法があります。それは、GMPの取得を確認することです。

GMPとは衛生管理の基準のことです。GMPには製造時の管理項目が定められているため、取得しているメーカーでは完璧な品質管理が成されています。

このGMPは、1962年に初めてアメリカで導入されました。そしてアメリカでは2007年に健康食品を扱うすべての企業に対して、GMPの取得を義務付けています。

2010年にはGMPを取得していない製品は販売が禁止され、その数は400種類以上であったといわれています。このようにアメリカでは、サプリメントの品質管理にとても厳しい基準が設けられています。

日本でも1974年にGMPが作成され、1980年に厚生省令として交付されました。しかし、日本ではアメリカのように取得を義務化しているわけではありません。

したがってGMPを取得していない場合、安全管理が不十分になり、劣化した原料や化学物質が混入してしまうことも考えられます。

つまり、GMPを取得しているメーカーであれば製造過程における安全性が保証されているといえます。

現在、日本でもGMPを取得し、他の企業との差別化を図る傾向にあります。会社のホームページを見てみると、GMPを取得している場合は大きくPRしています。信頼できるメーカーの証として、GMPの取得を確認することをおすすめします。

ただし、GMPは管理の基準を定めているものであり、添加物の有無など成分の内容には関係がありません。したがって、原材料も確認した上でGMPの有無も確認するとよいです。

品質検査は項目が多く、第3者機関で実施

GMPの取得と共に確認したいのが、品質検査に関することです。日本ではサプリメントは食品として扱われるため、品質管理は各メーカーに任されています。そのため、会社によって検査体制がまちまちです。

そこで品質検査については、

  • 品質検査の項目が多いか
  • 第三者機関が検査しているか

以上の2点に注目します。

例えば、ベルタという葉酸サプリは検査について、ホームページに以下のような記載があります。

原材料の受入検査から秤量・混合、重量チェック、クリーニング、放射能チェック、菌検査、出荷前検査など18項目以上のチェック工程を経て製造・出荷

さらに、第三者機関にて検査を実施済みとあります。

信頼できるメーカーほど情報を開示しています。検査に関する情報も確認しておくと安心です。

相談窓口が開設されている

ただし、ホームページからの情報だけではよくわからない場合があるかもしれません。そんなときは相談窓口に電話してみると、早く的確に回答が得られる場合が多いです。

特に初めての妊娠の場合は、不安なことも多いと思います。気軽に相談できる窓口があることは、安心して妊婦生活を送ることにもつながります。

また安全性などを確認の上で購入した場合でも、飲み続けているうちに疑問が湧く場合があるかもしれません。

私も妊娠中に葉酸が過剰摂取になっていないか気になったため、メーカーに問い合わせたことがあります。その際、専門員の方が素人の私にも大変よくわかるように丁寧に対応して下さり、安心した経験があります。

このようにいつでも相談窓口に連絡できるよう、相談体制が整っているメーカーであれば安心です。

錠剤の大きさを確認する

葉酸が特に必要になる妊娠初期は、つわりの時期とも重なります。

人によってはつわりがひどく食べ物からの栄養摂取が難しい場合、サプリメントからの栄養補給のみに頼らざるを得ない状況もあるかもしれません。その際、飲みづらい大きさの錠剤であると葉酸の摂取が難しくなってしまいます。

一般的に妊婦が飲みやすい大きさは、直径8~9mm、厚さ3~5mm程度になっているようです。この大きさの範囲内であれば、飲みやすい大きさであるといえます。

サプリメントの大きさも、合わせて確認しておくことをおすすめします。

価格を参考にする

最後に価格も参考にして、サプリメントを選ぶことをおすすめします。なぜなら葉酸サプリは、妊婦にとって継続して摂取する必要があるため、継続しやすい価格であることも大事なポイントだからです。

葉酸サプリメントの値段は300円台から1万円台までと幅広くなっています。その違いは主に原材料、含有量、製造方法の違いにあります。

価格の安いサプリメント(500円未満)は、原材料が安価である場合があります。そして、添加物が多くなる傾向にあります。参考までに前述のドラッグストアで購入できるサプリの値段は、1か月あたり300円未満でした。

一方で価格が高いもの(3000円以上)は、品質にこだわっているといえます。葉酸のみならず妊娠時に必要なビタミン類や鉄分も配合され、中には美容成分が含まれるものもあります。

また、余計な添加物を配合しない傾向があります。前述の天然成分を多く配合したサプリメントの価格は、定期便(6回)を利用すると1か月あたり3,980円ほどです(より値段の高い葉酸サプリもあります)。定価購入にすると通常の値段より30%以上安くなります。

妊婦の葉酸サプリは赤ちゃんの健康のために、継続して摂取する必要があるものです。そのため、品質のよいサプリを値段が安くなる定期便で購入するのも賢い選択です。

一方で手頃な値段であるからといって、すべてが低品質なわけではありません。例えば栄養価の壊れない加工法により作られた高品質の葉酸サプリでも、自社農場・自社工場を所有しているメーカーはコストの削減が可能です。

しかし価格については、目安として1か月あたり500円未満といった安価なものは妊婦用としてはおすすめできません。また、1,000円以下でも微妙です。妊婦用の葉酸サプリは継続しやすい価格の範囲内で、品質のよいものを選ぶ必要があります。

まとめ

食品中に含まれる葉酸は、代謝の過程で吸収率が半減します。一方で葉酸サプリから摂取した場合の吸収率は食品中に含まれる葉酸の場合と比べ、約2倍高くなります。したがって品質のよい葉酸サプリを選び、妊娠中に継続して飲み続けることが大事です。

サプリメントの購入の際は、ホームページや実際のパンフレット、商品に記載されている原材料を確認するようにします。選び方としては、以下の項目が重要になります。

  • 天然成分が多く配合されているか
  • 葉酸の吸収を助けるビタミンは入っているか
  • 貧血予防の鉄剤が含まれているか

これら3点を原材料名から読み取るようにしましょう。さらに、以下の項目についてサイトから確認しておくと安心です。

  • GMPの取得の有無
  • 品質検査の項目
  • 相談窓口はあるか
  • 飲みやすい大きさであるか
  • 適正な価格であるか

信頼できる葉酸サプリを摂取することは、安心して妊娠・出産・育児を楽しむことにつながります。葉酸サプリのサポートを受けながら、貴重なひとときを母子ともに元気に過ごしてください。