葉酸は、妊娠初期に形成される赤ちゃんの神経管が正常に作られるのを助けます。また造血ビタミンでもあるため、妊婦の貧血を防ぎ授乳期には母乳の出も良くします。そのため妊娠初期から授乳期の女性には、特に重要な栄養素です。

ただし妊娠・出産・授乳期においては薬を飲むことができない場合も多いため、葉酸以外の栄養素もバランス良く摂り、常に体調管理に気を配ることが大事です。

その際、葉酸と共に摂取してもらいたい栄養素の1つが亜鉛です。亜鉛には風邪を引きにくくするなど、免疫力をアップさせる効果があります。また亜鉛は、健康的な髪の毛を作ります。

さらに葉酸と亜鉛を飲み合わせることで、赤ちゃんの発育を促したり生殖機能を向上させたりする効果もあります。

そこで今回は、「葉酸と亜鉛の役割」「飲み合わせた場合の効果」について検証していきます。

亜鉛を含む葉酸サプリメントが妊娠中に役立つ理由

葉酸の必要性については、母子手帳に記載があります。そのため多くの妊婦は葉酸の存在について知っており、サプリメントを摂取しています。しかし「妊婦にとって、亜鉛も重要な栄養素である」ことをご存知でしょうか。

亜鉛は体内に2000mgあるといわれています。しかし葉酸と同じく体内で形成することができないため、定期的に食べ物から摂る必要があります。その亜鉛の主な働きは、以下の通りです。

  • きれいな髪や肌を作る
  • 味覚を正常に保つ
  • アンチエイジング
  • 免疫力アップ
  • 新陳代謝の活性化
  • 生殖機能の改善
  • うつ状態を防ぐ

私は妊娠中、大きなトラブルに見舞われることもなく赤ちゃんの発育も順調でした。

しかし、一度だけ困ったなと思ったことがあります。それは妊娠後期に、咳が止まらなかったことです。妊娠中に咳をすると、お腹に響くため少々つらいものがありました。そして健診のとき主治医に相談しましたが、薬は出ませんでした。

このように妊娠中は薬が処方されないことが多いため、普段から栄養のバランスに気を配り体調を管理することが大事です。そして風邪の予防には、亜鉛がとても役に立ちます。亜鉛には、免疫力をアップさせる効果があるからです。

亜鉛には、鼻やのどの粘膜を守っているビタミンA を体内に留める効果があります。また仮に風邪を引いたときも、細菌を攻撃する白血球には亜鉛が含まれているため、体内に亜鉛があると風邪を引いても軽く済みます。

このように日々の体調管理に役立つ亜鉛ですが、亜鉛が多い食べ物(100g中)には以下のようなものがあります。

  • 牡蠣13.2mg
  • 煮干し7.2mg
  • 豚レバー6.9mg
  • 牛肉ひれ4.2mg
  • 卵黄4.2mg
  • 納豆1.9mg
  • ほうれん草0.7mg

亜鉛が一番多い食材は牡蠣です。妊婦が1日に必要な亜鉛10mgは、牡蠣だと2粒程度で補えます。牡蠣には亜鉛以外にもグリコーゲン、鉄などのミネラル、タウリンなどのアミノ酸、葉酸などのビタミン類などが40種類以上含まれているため、おすすめの食材です。

私は「フライはカロリーが気になるし、生は当たった時が怖い」と思い、以下のようにいつも牡蠣を酒蒸しにしていました。

フライパンに牡蠣を入れ、適当にお酒を振り蓋をして蒸し煮をします。蒸した牡蠣にレモンなどの柑橘類を添えると、ビタミンCが亜鉛の吸収をアップさせるためおすすめです。

しかし亜鉛が多いからといって、妊娠中から授乳期の間ずっと牡蠣や煮干しを食べるのは負担になります。そんなとき亜鉛を含む葉酸サプリメントを活用すると、手軽に栄養素を摂ることができて便利です。妊娠中の咳もひどくならず次第に治まっていったのは、サプリメントや食べ物から上手に亜鉛を摂っていたおかげだと思います。

そのほか食事のバランスに不安があるときも、サプリメントを上手に活用すれば葉酸や亜鉛の不足を心配することなく過ごすことができます。

風邪を引きにくくし免疫力がアップする亜鉛は、葉酸と共に妊婦が意識したい栄養素の一つです。ぜひ亜鉛を含む葉酸サプリを選ぶようにしてみて下さい。

亜鉛と葉酸の同時摂取が赤ちゃんの発育を助ける

亜鉛は免疫力に関わるだけでなく、赤ちゃんの健全な発育を助ける大事な栄養素でもあります。

私達の体は、毎日、細胞分裂を繰り返しています。赤ちゃんも初めは受精卵という1つの細胞でしたが、お母さんのお腹の中で約10ケ月の間に40回以上の分裂を繰り返します。そして最終的には、およそ60兆個の細胞をもつヒトへと成長していきます。

このとき葉酸は、細胞分裂に必要な核酸(DNAやRNAの総称)を作ります。そして亜鉛は、タンパク質の合成に関わる酵素の原料になります。したがって葉酸と亜鉛を組み合わせてしっかり摂取できていれば、赤ちゃんはどんどん成長していくことができます。

ところがDNA(遺伝子の情報)を作る葉酸やタンパク質の合成に関わる亜鉛が不足すると、細胞分裂がうまくできません。すると赤ちゃんが正常に大きくなることができず、発育にも影響を与えてしまいます。場合によっては、早産や低体重へとつながることもあるため注意が必要です。

そして妊婦に必要な栄養素に配慮した葉酸サプリメントには、亜鉛も入っています。例えば、ベルタという葉酸サプリメントに含まれるビタミン・ミネラル類は以下の通りです。

葉酸と共に、亜鉛などのミネラルも14種類入っています。

ただし妊婦用と謳っている、すべてのサプリメントに亜鉛が入っているわけではありません。実際にドラッグストアには、20種類近くの妊婦用の葉酸サプリメントがあります。

成分表を確認すると、葉酸、鉄分、カルシウムが含まれているものは多くありました。さらにいうと、亜鉛が入っているものは全くありませんでした。例えば、赤ちゃん用品の大手メーカーである会社の葉酸サプリメントの成分は以下の通りです。

マルチトール粉糖(砂糖、マルトデキストリン)りんご果汁粉末、グレープフルーツ果汁粉末、粉末はっ酵乳(殺菌)、ミルクエキスパウダー/焼成カルシウム、酸味料、セルロース、ショ糖エステル、ピロリン酸鉄、糊料(プルラン)、香料、着色料(紅花黄、クチナシ、V.B2)、V.B6、葉酸、甘味料(スクラロース)、V.B12、V.D

上記のサプリメントでは葉酸、鉄、カルシウムは摂れますが、亜鉛は含まれていません。また青文字で示したように、人工甘味料であるマルチトールを始めとする糖分が非常に多いサプリメントである点も気になります。

妊娠中はホルモンの不安定さから、血糖値が上がりやすい傾向にあります。妊娠中に高血糖になると、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群のリスクが高まります。また赤ちゃんにブドウ糖がたくさん供給されてしまうことで、巨大児となり難産を招きます。

そして産後は逆に赤ちゃんへの糖分の供給が大幅に減ることになります。その結果、赤ちゃんの低血糖を招き、命の危険が及ぶこともあります。

セルロースは、植物から採れる食物繊維です。しかし安全性が十分でないとの指摘があります。ショ糖エステルは、染色体異常の発症が指摘されている成分です。

ドラッグストアで手軽にサプリメントが購入できるのは、利点です。しかし妊娠中は、お母さんが口にしたものがそのまま赤ちゃんへ影響を与えてしまいます。そのため余計な添加物を含むサプリメントは妊娠中に飲むものとしてはおすすめできません。

赤ちゃんの健全な発育のために、葉酸と亜鉛を含み、なおかつ添加物に配慮されたサプリメントを選ぶようにしましょう。

髪に効果あり!亜鉛を含んだ葉酸サプリメント

妊娠中は、女性ホルモンが大量に分泌されます。中でも特に優位になるプロゲステロンには、髪の毛の成長を助け、抜け毛を防ぐ働きがあります。そのため妊娠中に抜け毛に悩むことは、あまりありません。

ところが産後はホルモンバランスが急激に変化し、プロゲステロンの分泌が一気に減少します。その結果、妊娠中に抜けなかった髪の毛が一気に抜け始め、産後は脱毛に悩む人が多くなります。

健康的な髪の毛は、毛細血管から栄養を取り込んで作られます。このとき造血ビタミンである葉酸が、血行を促し髪の成長を助けます。

そして髪の毛の99%の成分であるタンパク質は、亜鉛の働きにより作られたアミノ酸が再合成されることによって作られます。また亜鉛は、髪の毛のキューティクルを覆うコラーゲンの生成にも関わっています。つまり亜鉛が不足するとタンパク質の合成がうまくできず、髪質が細くなったりキューティクルのないパサついた髪の毛になったりします。

健康的な髪の形成や産後の抜け毛対策には、葉酸と亜鉛の同時摂取が効果的です。赤ちゃんのためだけでなく、美容にも亜鉛は優れているのです。

葉酸と亜鉛の飲み合わせが不妊にも効果的

さらに葉酸と亜鉛を飲み合わせた場合、細胞分裂を助けたり、健康的な髪の毛を作ったりする効果が高まるだけではありません。葉酸と亜鉛の同時摂取は、妊活男性の精子の数を増やすのに役立つとの研究報告もあります。

そもそも亜鉛は男性の場合、前立腺に多く含まれています。そのため、亜鉛の不足が精子の形成に顕著な影響を与えます。

亜鉛不足が精子の形成に与える影響については、以下のような実験で証明されています。

亜鉛の欠乏は精子の形成や雄性の第1次および第2次生殖器官の発育に影響する。初期の組織病理学的研究によれば、亜鉛欠乏の雄性ラットでは、細精管の萎縮、睾丸、副睾丸、前立腺および脳下垂体の発育低下、睾丸胚上皮の萎縮などが観察されている。

引用:「生命と微量元素講座」

ラットの実験で、亜鉛の欠乏が精子や生殖器官の発育に様々な影響を与えることが確認されています。さらにいくつかの他の動物でも亜鉛不足による精子や生殖器への影響について、同様の結果が得られています。

また公益社団法人健康長寿ネットには亜鉛について、以下のような記載があります。

亜鉛が不足すると、味を感じにくくなる味覚障害になる可能性があります。そのほかに、貧血、食欲不振、皮膚炎、生殖機能の低下、慢性下痢、脱毛、免疫力低下、低アルブミン血症、神経感覚障害、認知機能障害などのさまざまな症状が現れます。

このように亜鉛は、生殖機能を向上させる効果があります。さらに亜鉛に葉酸が加わることで、その効果が高まることが報告されています。

2002年にオランダで妊娠可能な男性108人と不妊症の男性103人が、26週にわたって葉酸と亜鉛を摂取しました。すると、葉酸と亜鉛の摂取後は妊娠可能な男性と不妊症の男性の両方で、精子の数が増加しました。

2017年には、イランでも「葉酸と亜鉛の同時摂取は、繁殖力の弱い男性の精子に良い影響を与える」との研究結果が報告されました。

このように葉酸と亜鉛の摂取は、生殖機能に良い影響を与えることがわかっています。

ただし葉酸も亜鉛も例えば10mg摂取したからといって、そのまま10mgすべてが吸収されるわけではありません。割合でいうと体内での吸収率は葉酸が50%、亜鉛が30%程度だといわれています。また吸収率は年齢と共に低下します。

さらに添加物を多く含む食品を多食すると、葉酸や亜鉛の吸収を促す栄養も不足しがちになります。

したがって不妊対策にはバランスの良い食べ物を基本とした上で、余計な添加物を含まない亜鉛入りの葉酸サプリメントを活用することをおすすめします。

亜鉛と葉酸の同時摂取で阻害されるものがあるのか

このように亜鉛と葉酸を飲みあわせることで、赤ちゃんの発育や妊婦の体調管理の面だけでなく、健康的な髪の生成や生殖機能の向上効果もあります。では逆に亜鉛と葉酸の飲み合わせによって、吸収が阻害されるものはあるのでしょうか。

葉酸と亜鉛の飲み合わせについて、食品安全委員会肥料・飼料等専門調査会(2013)に以下のような報告があります。

葉酸と亜鉛の相互作用については、多くの報告がある。少量(0.35mg/ヒト)の葉酸でも、亜鉛の栄養状態に悪影響を及ぼす可能性があると示唆する報告もあるが、最近の報告では、葉酸は亜鉛の摂取あるいは機能に悪影響は及ぼさないとされている。

そのほかの厚生労働省の報告にも、葉酸と亜鉛の飲み合わせにより、何かが阻害されるなどの記載はありません。問題は葉酸と亜鉛の同時摂取ではなく、それぞれの栄養素の過剰摂取にあるのです。

例えば葉酸の過剰摂取によって、ビタミンB12欠乏症による貧血症状を隠してしまうことがあります。その結果、ビタミンB12欠乏症の診断が遅れてしまう場合があります。

また亜鉛を過剰摂取した場合についても、厚生労働省の報告書に以下のような記載があります。

過剰に摂取した場合は有害な場合があります。過剰摂取した場合、吐き気、嘔吐、食欲不振、胃痙攣、下痢および頭痛などの徴候がみられます。長期にわたり亜鉛を過剰摂取すると、銅の減少、免疫の低下、およびHDLコレステロール(「善玉コレステロール」)の減少などの問題が生じる場合があります。

そのためサプリメントなどの栄養機能食品については、厚生労働省により注意噴起の表示が義務付けられています。

葉酸】

本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進したりするものではありません。1日の摂取目安量を守ってください。 本品は、胎児の正常な発育に寄与する栄養素ですが、多量摂取により胎児の発育が良くなるものではありません。

 

【亜鉛】

本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進したりするものではありません。亜鉛の摂りすぎは、銅の吸収を阻害するおそれがありますので、過剰摂取にならないよう注意してください。1日の摂取目安量を守ってください。乳幼児・小児は本品の摂取を避けてください。

共通して、過剰摂取にならないよう呼びかけてあります。では葉酸や亜鉛の過剰摂取とは、具体的にどのくらいの量なのでしょうか。

厚生労働省ではサプリメントにおける過剰摂取を防ぐために、必要量と耐用上限量(健康リスクがゼロである上限値)を定めています。妊婦の必要量と30代女性の葉酸と亜鉛における耐用上限量(健康リスクがゼロである上限値)は以下のようになります。

葉酸亜鉛
妊婦の必要量400μg 10mg
耐用上限量1000μg40mg

サプリメントの会社では厚生労働省の指示にしたがって、定められた耐用上限量を越えない範囲で目安量を設定しています。例えばベルタ葉酸では、4粒で1日辺りに必要な400μgを摂ることができるようになっています。

このようにサプリメントに記載されている量を守れば、問題はありません。

また「国民健康・栄養調査(平成29年)」によると、30代女性の平均摂取量は葉酸226μg、亜鉛7.1mgで共に必要量に届いていません。この要因の1つに、葉酸と亜鉛の両方とも水溶性のビタミン・ミネラルであり、体に蓄積しないことが考えられます。

さらに体に吸収する過程で栄養素が半減し、亜鉛に至っては体内で吸収されるのはほぼ30%といわれています。そのため食事による過剰摂取は考えにくく、サプリメントの記載量を守れば過剰摂取の心配はないです。

亜鉛と葉酸は赤ちゃんの発育を助け、免疫力アップや生殖機能の向上にも役立ちます。亜鉛を含む葉酸サプリメントをぜひ上手に活用してみて下さい。

まとめ

赤ちゃんの健全な発育のために、妊婦は薬を飲むことができない場合が多いです。そんな妊娠中に役に立つのが亜鉛です。

亜鉛は免疫力をアップさせる効果があり、風邪を引きにくくさせます。産後に気になる抜け毛を防ぎ、髪の毛を作るタンパク質やキューティクルを作るコラーゲンの生成にも関わっています。

さらに亜鉛と葉酸の同時摂取は、赤ちゃんの発育を助けたり精子の量を増やしたりすることがわかっています。

食材では、亜鉛は牡蠣に多く含まれます。しかし食事のみの栄養摂取では負担になるため、サプリメントも上手に活用します。

ただし妊婦用に作られた葉酸サプリメントでも、亜鉛を含んでいないものが多いです。またドラッグストアにある葉酸サプリメントは、糖分が多く余計な添加物を含む商品ばかりで、正直おすすめできるものはありません。

妊娠中は余計な添加物を含まず、葉酸と共に亜鉛も摂取できるサプリメントを選ぶようにします。そしてサプリメントを活用するときは、記載された量を必ず守るようにしましょう。これにより、お腹の中で大切な赤ちゃんが育ってくれるようになります。