葉酸は妊娠、授乳期において母子の健康に重要な栄養素です。そのため、女性が摂取するイメージが強いのではないでしょうか。

しかし葉酸は、妊活男性にも重要な栄養素です。旦那も一緒に妊活をするとき、葉酸によって質の良い精子が形成され、男性不妊の改善につながるのです。

そこで今回は、「なぜ、妊活男性に葉酸が必要なのか」さらには「必要量はどのくらいなのか。いつから飲むべきか」、について具体的に解説します。

精子の細胞分裂とDNAの合成に葉酸が必要

葉酸の摂取は、胎児の神経管閉鎖障害のリスク軽減に役立ちます。しかし、効果はそれだけではありません。

以下のように、葉酸には様々な重要な働きがあります。

  • 細胞分裂を助ける
  • DNAの合成
  • 肺がん・直腸がん・子宮頸がんを予防する
  • 傷口が早く治る(口内炎など)
  • 痛風・腎臓結石・関節炎の予防と改善
  • 心の病の予防と改善
  • 認知症の予防
  • 歯周病の予防
  • 造血作用

こうした作用があるため、妊娠初期に限らず妊娠中期に葉酸サプリメントを活用することで、貧血や妊娠高血圧症候群、さらには胎児の発育不全や早産のリスクを予防できます。これは葉酸がビタミンB12と共に赤血球を生産し、造血に関わる働きをしているからです。

こうした作用は、妊活男性にとって有効です。葉酸には、細胞分裂を助ける働きがあります。これは葉酸が栄養素となって、細胞分裂に必須である核酸(DNAやRNAの総称)を合成することによります。

核酸の中には、遺伝子の情報であるDNAも含まれています。葉酸は、精子の細胞分裂とDNAの形成にも関わる栄養素なのです。

赤ちゃんの元である精子は、細胞分裂を繰り返すことによって形成されます。そのため細胞分裂に関わる葉酸は、妊活男性にとって欠かせません。

引用:高校の化学と生物の要点と勉強法

このとき、細胞分裂をするときに葉酸が不足すると、精子が正常に分裂できません。

現在、日本では10組に1組のカップルが不妊症であると言われています。その原因の半分は男性側にもあると考えられています。

そして男性不妊の原因の90%以上が、うまく精子が作られないことによるものです。つまり、精子の細胞分裂が正常に行われていないのです。

その場合の症状は、主に以下の3つです。

  • 精子の数が少ない(乏精子症)
  • 精子の数は正常だが運動率が悪い(精子無力症)
  • 精液中に精子が全くいない(無精子症)

このように細胞分裂の不具合により、精子の数が少なかったり運動率が低かったりすることが男性不妊の主な原因につながります。

この中でも、精子の数が少ない乏精子症に対して葉酸が効果的だとする研究報告があります。

2002年にオランダで「108人の妊娠可能な男性」と「103人の不妊症の男性」を対象に、26週にわたって葉酸と亜鉛を摂取してもらいました。すると摂取後は、妊娠可能な男性と不妊症の男性の両方で精子の数が増加しました。

211人すべての被験者の精子の数が増加したのは、注目すべき結果です。また2017年に行われたイランの研究でも、葉酸の摂取により精子が増加することがわかりました。

人間の体には約60兆個の細胞があるといわれます。すべての細胞は毎日、細胞分裂を繰り返しながら新しく生まれ変わっています。精子も細胞分裂を繰り返すことで、形成されています。

このとき必要なDNAなどの核酸を葉酸が合成しています。したがって葉酸は、旦那にも重要な栄養素だといえます。

葉酸の摂取で精子の異常が減少する

さらに葉酸の摂取で、精子の異常が軽減したとの研究報告が米医学誌「Human Reproduction」(2008年3月20日号)に掲載されました。

カルフォルニア大学バークレー校、子ども環境保全センターの責任者ブレンダ・エスケナジ(Brenda Eskenazi)氏らは、様々な種類の遺伝的異常を見つけるために精子を調べました。すると葉酸と精子の関係について、以下のことがわかりました。

研究チームは89人の健康な男性の精子を分析し、亜鉛、葉酸、ビタミンC、ビタミンE、βカロテンの毎日の消費について聞き取りを行った。

すると、葉酸摂取量が多い男性で精子異常の発症率が最も低いことを発見した。実際、葉酸摂取量が多い男性(722〜1150μg)は、他の男性に比べて数種の精子異常の頻度が20〜30%低かった。

引用: HealthDay News for Healthier Living

これまで先天性の欠損に関する研究では、主に受胎ごろの女性の食生活に焦点を当てていました。しかしこの研究結果から、男性の食事も考慮する必要性が出てきました。

そしてエスケナジ氏は「正常な卵子が異常な精子の一つと受精した場合、ダウン症候群のような先天性欠損症を引き起こす可能性がある」と述べています。さらに、「異常な精子は流産の増加をもたらす可能性がある」とも指摘しています。

そのためこの研究で、妊活男性は葉酸を含むサプリメントやマルチビタミンを含む葉酸の摂取量を増やすことを勧めています。

食事が不規則な旦那さんには、葉酸サプリがおすすめ

では葉酸を食品から摂取する場合、何をどのくらいの量ほど摂れば良いのでしょうか。1日に男性が必要な葉酸を仮に野菜から摂る場合、1日あたり350gが必要です。例えば、以下のような野菜の総量になります。

  • 小松菜1把
  • 白菜3枚
  • きゅうり1/2本
  • パプリカ1個
  • プチトマト4個
  • 人参2cm

上の写真にある野菜が、ちょうど350gです。このくらいの量なら、何とか食べられるかも知れません。

しかし、実際は男性の野菜不足が懸念されています。

国民健康・栄養調査(平成28年)によると、20才以上の男性の平均野菜摂取量は、目標値に届いていません。野菜をたくさん食べている男性の値でさえ、1日あたり318gとなっています。

また葉酸は熱や水に弱く、さらには代謝の過程で体内への吸収率が半減します。したがって1日あたりに必要な葉酸を摂取するために、実際は写真の倍以上の野菜を摂る必要があります。

さらに男性の場合、仕事柄外食が続き野菜不足が気になることもあると思います。旦那さんの食事管理が難しいケースは大多数なのではないでしょうか。

そのようなときサプリメントを活用すると、効率よく葉酸を摂取することができます。なぜならサプリメントに含まれる葉酸は、分子の結合が小さいモノグルタミン酸型の葉酸だからです。そのため、ほぼ100%小腸で吸収できるのです。

実際に私も夫に、葉酸サプリを飲んでもらっていました。夫は仕事上の付き合いで外食が多く、食事時間も不規則だったからです。さらに好き嫌いが多かったことも気になったため、体調管理の上でもサプリメントが役立つと考えました。

そのお陰で、夫の栄養不足を気にすることもなくなり安心できました。また一緒に葉酸サプリを飲むことで赤ちゃんを待ち望む楽しさも共有し、元気な赤ちゃんを授かることができました。

ぜひあなたの旦那さんにも、葉酸を摂取してもらって夫婦で妊活することをおすすめします。

ドラッグストアの葉酸サプリは妊活としては避けるべき

では男性が飲む葉酸サプリは、どのような点に注目して選べば良いのでしょうか。

葉酸サプリは、ドラッグストアにもたくさんの種類が売られています。しかし、その中には余計な添加物が含まれているものが多く存在します。

例えば、ドラッグストアに置いてある大手メーカーの葉酸サプリ(1ヶ月あたり1000円未満)の成分は以下の通りです。

粉末還元麦芽糖、デンプン、デキストリン/結晶セルロース、未焼成カルシウム、クエン酸第一鉄ナトリウム、ビタミンC、ショ糖脂肪酸エステル、シェラック、ビタミンB6、ビタミンB1、葉酸、ビタミンB12

原材料の中で、含有量が一番多いのは粉末還元麦芽糖です。

サプリメントは体質改善のために、毎日摂取してこそ意味があります。しかし糖分の多いサプリの場合、糖分過多になる可能性があります。また、そのことが血糖値を押し上げてしまうことにもつながります。

糖分の次に多いのが、デンプンとデキストリンです。主に結着剤、増量剤として使われ安全性が確認されています。ただしサプリメントの体裁を調える目的で使用されているため、健康効果はありません。

結晶セルロースは植物から採れる食物繊維で、医薬品などにも使われています。しかし、安全性は十分でない可能性があります。またショ糖脂肪酸エステルは、染色体異常の発症が指摘されています。

精子の頭の部分には、染色体が多数存在しています。精子に染色体異常があると、受精しても多くの場合、流産につながります。したがって、妊活中の男性については添加物の摂取に特に注意が必要です。

さらに光沢剤として、シェラック(ラックカイガラムシの分泌物)が使われています。

同じサプリメントを選ぶにしても、妊活男性はこうした葉酸サプリは避けるべきです。

旦那にもおすすめなのは、妊婦用の葉酸サプリ

前述の通り、妊活男性は余計な添加物が含まれていないサプリを選ぶことが大事です。

その点、妊婦用のサプリは特に安全面に配慮してあるためおすすめです。香料、着色料、保存料、漂白剤、防カビ剤、膨張剤、苦味料、光沢剤が無添加である場合が多いです。

例えば、ベルタという妊婦用の葉酸サプリの成分は以下の通りです。

乾燥酵母、葉酸含有酵母、もろみ酢粉末、ミネラルイースト、ヨウ素含有酵母、卵殻膜粉末、燕の巣加工品、馬プラセンタエキス末、フィッシュコラーゲン、乾燥野菜粉末(大麦若葉、ケール、ブロッコリー、キャベツ、大根葉、かぼちゃ、さつまいも(紫芋)、チンゲン菜、パセリ、人参、セロリ、苦瓜、ほうれん草、桑の葉、モロヘイヤ、よもぎ、白菜、アスパラガス、トマト、野沢菜、れんこん)、ナンノクロロプシス、乳酸菌末、微細藻由来DHA・EPA油/貝殻末焼成カルシウム、セルロース、ピロリン酸、第二鉄、ステアリン酸Ca、ビタミンC、クエン酸、リン酸カルシウム、ラクトフェリン、ビタミンB6、ビオチン、サンゴカルシウム、β-カロテン、ヒアルロン酸、葉酸、抽出ビタミンE、ナイアシン、パントテン酸Ca、酸化防止剤、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンB12

前述の添加物が含まれてない上、自然の食材を使用し21種類もの野菜粉末が含まれています。私の夫は好き嫌いがあったため、多くの種類の野菜をサプリメントから摂取できることはとても便利でした。

また妊婦用の葉酸サプリメントは、厳しい衛生管理基準(GMP)に基づいて製造されています。

さらに、残留農薬や放射能の検査も第三者機関で実施されていると安心です。

生まれてくる赤ちゃんのために、旦那にも品質の良いサプリを選ぶことが大事です。

したがって、妊活男性も妊婦用の高品質の葉酸サプリメントを摂ることをおすすめします。特に不妊で悩んでいるならなおさらです。

夫婦で葉酸サプリを飲み、不妊対策するとお得

葉酸サプリは妊活中の男性にも重要なため、メーカーによっては夫婦で飲むと値段がお得になる場合もあります。

商品の中身は同じものですが、男女で摂取量が違います。そのため、あらかじめ男性用と女性用に分けられています。上記の商品の場合、1日の摂取量は女性で4粒、男性は2粒です。

なお、葉酸サプリは継続してこそ意味があるものです。そのため定期便が適切ですが、男性の場合だと妊娠発覚後は次の妊活まで葉酸サプリメントが不要になります。そのため6回のコースとなっていますが、男性はいつでも解約することができます。

これらの仕組みを上手に利用して、夫婦で妊活をすることをおすすめします。

適量を守り、男性は妊娠を計画する3ケ月前から葉酸サプリを飲む

では男性は、葉酸サプリをいつから、どのくらい飲めばよいのでしょうか。

女性の場合、妊娠を計画する1ケ月前から1日400μgの葉酸サプリを摂取することが厚生労働省により推奨されています。一方で男性は厚生労働省により1日あたり200μgの葉酸が必要だと定められています。つまり、女性の半量になります。

なぜ、男女で摂取量に違いがあるかというと、妊娠を計画する女性の場合、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のために葉酸を多く摂る必要があるからです。また葉酸は造血に関わるビタミンであるため、貧血予防や胎児の発育にも必須です。

そして葉酸摂取の時期は女性よりも早い、妊娠を計画する3ケ月前からが理想です。精子の形成には約80日かかるからです。

また良質のサプリメントには、葉酸以外にも多くのビタミンやミネラルが含まれています。例えば、以下のようになります。

これらの栄養素は妊活だけでなく日常の栄養不足を補い、体調を整えることにもつながります。

ただしサプリメントは手軽に摂ることができるため、摂取量を守るようにします。

多くの栄養素を食事からすべて摂るには、実際のところ無理があります。したがって適量を守り、妊娠を計画する3ケ月前から質の良いサプリメントを活用することは賢い選択だといえます。

摂り過ぎによる男性への副作用はあるのか

それでは葉酸を摂り過ぎた場合、副作用はあるのでしょうか。

厚生労働省による葉酸の耐用上限量(健康リスクがゼロである上限値)は男女共に18〜29歳で900μg、30〜69歳は1000μgです。

葉酸は水溶性のビタミンであり、余計に摂取した分は尿として体外へ出ていきます。したがって、普段の食事で過剰摂取になる心配はありません。またサプリの場合も、摂取量を守れば全く問題はありません。

しかし、なぜ上限が定められているのでしょうか。その点について、厚生労働省の報告をまとめると、以下のようになります。

いわゆる栄養補助食品は、簡単に摂取できるため過剰摂取につながることも考えられます。また、それらをたくさん摂りすぎるとビタミンB12欠乏の診断を困難にすることもあります。

医師の管理下にある場合を除き、葉酸摂取量は1mgを超えるべきではありません。そして栄養補助食品を利用することが、日常の食生活をおろそかになることにつながらないよう配慮することが大事です。

ビタミンB12欠乏症の特徴の一つに貧血があります。葉酸を摂り過ぎると、ビタミンB12欠乏症で発症した神経障害は治癒しないまま、見た目の貧血症状が改善してしまうことがあります。すると、ビタミンB12欠乏症の診断が遅れてしまいます。

また葉酸の摂り過ぎによる副作用として、逆にビタミンB12欠乏症に関連する貧血を悪化させたり、永久的な神経障害を生じさせたりすることもあります。

ただし前述の通り、葉酸は調理で熱や水にさらされることで体内への吸収率が半減する特性があります。また水溶性ビタミンのため、体に蓄積することもありません。さらに男性の場合、外食により野菜不足になることも多いです。そのため摂取量を守れば、摂り過ぎになることはまずありません。

例えば、以下の女性用の葉酸サプリでは、1日の目安となる摂取量が決められています。

こうした量を守れば問題ありません。特に男性の場合、妊活用の葉酸サプリでは特別な理由がない限り1日200μgの摂取に設定されています。

18〜29歳の男性が不妊のために葉酸サプリメントを活用するにしても、残り700μgを食事から摂取しない限り、摂り過ぎにはなりません。そのため副作用の心配をする必要はないです。

まとめ

葉酸は胎児の奇形を防ぐだけではありません。精子の細胞分裂を助け、DNAを合成する働きがあります。そして、精子異常のリスクも軽減させる効果があります。これにより、男性不妊を改善できます。

葉酸は野菜にも多く含まれていますが、熱や水に弱い性質があります。そのため食品からの葉酸摂取では、体内での吸収率がおよそ半分にまで落ちてしまいます。その点サプリメントに含まれる葉酸は分子の結合が小さいため、体内でほぼ100%吸収することができます。

このとき妊活男性は、妊娠を計画する3ケ月前から1日200μgの葉酸を摂取するのが理想です。精子が形成されるのに約80日かかるからです。

また仕事柄、外食や不規則な食事が続くときにも葉酸サプリはとても便利です。ただし、ドラッグストア等で売られている安価な製品(1000円未満)ではなく、安全面や栄養、添加物に配慮された妊婦用のものを旦那も飲むことをおすすめします。

メーカーによっては夫婦で葉酸サプリを飲むと、お得になるコースがある場合もあります。これらも上手に利用しながら、妊活は夫婦で協力し合うのが大事です。

同じサプリメントを飲むことで一体感が生まれ、その後の子育てにも良い影響があります。ぜひ夫婦で、葉酸サプリメントを上手に活用してみてください。