赤ちゃんの神経管閉鎖障害を防ぐために、葉酸が役立ちます。さらに葉酸は造血やDNAの形成にも関わるため、妊婦にとって欠かせない栄養素の1つです。2002年からは、母子手帳にも葉酸の重要性について記載されるようになりました。
葉酸は水溶性のビタミンであり、過剰に摂取した分は体外へ排出される特性があります。そのため、毎日欠かさずに摂取することが大事です。
このときカットするだけで手軽に生食でき、さらに葉酸も補給することができる果物がキウイです。そのほかキウイには、妊婦に必要な栄養素が豊富に含まれています。そこで今回は、キウイの栄養素や魅力、さらには「妊婦は葉酸摂取のために何個食べれば良いのか」について解説していきます。
もくじ
キウイ1個の葉酸含有量
キウイはスーパーに常時置かれている、私達にとって身近な果物です。私の場合だと近所のスーパーには、果肉が緑のものと改良されたゼリー状のキウイが並んでいました。値段はおよそ1個当たり、100円ほどです。
そのほか果肉が黄色の品種(ゴールドキウイ)も、時期によっては見かけます。ゴールドキウイも3種類ほどありますが、いずれも店頭に並ぶのは主に4月〜12月末頃までです。
果肉が緑色のキウイに比べて、黄色のゴールドキウイは絨毛が少なく甘みが強い特徴があります。これは甘みを好む日本人のために作られた品種です。
それではキウイには、どのくらいの葉酸が含まれているのでしょうか。栄養素を調べるには、文部科学省の食品成分データベースが便利です。これによると、キウイの葉酸量は以下の通りです。
【キウイ100g当たりの葉酸量】
- キウイ(緑肉種):36μg
- キウイ(黄肉種):32μg
葉酸含有量を比べると果肉が緑でもゴールドでも、さほど違いはありません。
ちなみにキウイ可食部100gとは、一般的な大きさのキウイのおよそ1個分だと考えると良いです。実際にスーパーに置いてあるキウイ(やや大きめ)の重さを計ってみると、一個が128gほどでした。
そして皮を剥くと、112gになりました。
購入したキウイの重さをいくつか計ってみると、どれもほぼ100g前後でした。したがって、キウイ1個はおよそ100gであると捉えて良いです。
ただしキウイは、必ずしも皮を剥かなければいけないわけではありません。ニュージーランドの知人によると、「ゴールドキウイを現地では皮ごと食べる」と聞きました。
さらにキウイ会社のサイトにも、「水で洗って食べる分には皮付きでも問題なく、むしろ皮ごと食べる方が食物繊維や葉酸を多く摂取できる」との記載があります。ゴールドキウイは絨毛も少なく皮も薄いため、嫌でなければ丸ごと食べてみてはいかがでしょうか。
いずれにせよ、調理の必要がなく手軽に葉酸を摂取できるのは、キウイの魅力の1つです。したがって妊娠中のデザートに、おすすめの果物だといえます。
葉酸以外にもたくさん!妊婦に必要な栄養素を含むキウイの魅力
キウイ100g(およそ1個分)には葉酸以外にも、妊婦に必要な栄養素がたくさん入っています。具体的には、以下の栄養素です。
グリーンキウイ | ゴールドキウイ | |
ビタミンC | 69mg | 140mg |
食物繊維 | 2.5g | 1.4g |
カリウム | 290mg | 300mg |
ビタミンE | 1.3mg | 2.5mg |
カルシウム | 33mg | 17mg |
この中でも、ビタミンCは免疫力を保つのに役立ちます。特に妊婦は薬が飲めないことも多いため、普段からビタミンCを意識して摂取して、風邪などのウイルスから身を守るよう努めておくと良いです。またビタミンCは、産前・産後のホルモンバランスの変化による肌荒れを防ぐ効果もあります。
ちなみに日本人の食事摂取基準(2015)によると、妊婦が1日に必要なビタミンCの摂取量は95mgです。したがってキウイ(緑肉種)では1日に1個半、ゴールドキウイでは1個食べることで1日分のビタミンCが十分賄えます。
さらにキウイに含まれる食物繊維が、善玉菌の餌となり便秘の予防につながります。妊婦は黄体ホルモンの分泌が増える影響で、腸の働きが抑制されます。その結果、妊婦は便秘になりやすいため、食物繊維の摂取が大事です。
またカリウムには、体内にある余分な塩分を排出する働きがあります。塩分過多になると、血圧が上がったり浮腫が出たりすることがあります。そこで妊婦健診では毎回、血圧や浮腫のチェックがあります。
私が通っていた産婦人科では、健診のたびに自分で血圧を計ることになっていました。浮腫は、助産師さんがふくらはぎを指で抑えて「皮膚が元に戻るか、もしくはへこんだままか」でチェックします。
血圧の上昇(最高血圧:140mmHg以上、最低血圧:90mmHg以上)やむくみは、妊娠高血圧症候群の症状でもあります。
妊娠高血圧症候群が悪化するとき、「早産や死産の原因になるばかりでなく、ときには母体の生命もおびやかすようになる」と、母子手帳に記載があります。したがって予防のためにも、適度にキウイなどに含まれるカリウムを摂取し、余分な塩分を抜くことが大事です。
他には、キウイに含まれるビタミンEは血行を良くする栄養素です。妊婦の冷えは、お腹の張りや腰痛、むくみの原因になることがあります。さらに血行不良により切迫早産などのリスクも高まるため、血行を良くすることが大事です。
最後にカルシウムは、骨や歯の形成に欠かせないミネラルです。キウイ(緑肉種)は金柑、ハスカップに次いでカルシウム含有量が多い果物です。
そのほかキウイには鉄、マグネシウム、亜鉛などのミネラルも含まれています。手のひらに収まるキウイ1個にこれだけの栄養素が詰まっているのです。
さらにキウイは調理する必要がなく、実の部分を水洗いすることもないため、栄養素を丸ごと摂取できます。私は妊娠中のデザートとしてキウイを半分に切り、そのままスプーンですくってよく食べていました。
そのまま食べるのに飽きたときは、ヨーグルトの中に混ぜて食べることもありました。
ヨーグルトにも便秘を予防し、腸内環境を整える効果があります。そのため妊婦のおやつとしても、おすすめの食べ方です。さらにこのとき、糖分が含まれないプレーンタイプ、もしくは少しオリゴ糖などを加える程度にすると、なお良いと思います。
妊婦は常にバランスよく食事を摂る必要があります。その助けとして、豊富な栄養素を含むキウイをぜひ活用されてみてはいかがでしょうか。
妊娠中にキウイを何個食べれば葉酸が摂取できるか
ちなみに、私が妊娠したとき、受講した妊婦対象の料理教室(テーマ:バランスの摂れた食事)でのデザートは、キウイでした。
では妊婦が1日に必要な葉酸をキウイで賄おうとすると、一体何個食べれば良いのでしょうか。妊婦に必要な栄養素を知るには、母子手帳に記載されている「食事バランスガイド」が参考になります。
これによると、妊婦が妊娠中期以降に必要な果物は、1日3つとなっています。1つを100gと考えるため、具体的には以下のようになります。
【果物1つ分100gの量】
- ミカン1個
- リンゴ半分
- カキ1個
- ナシ半分
- ブドウ半房
- 桃1個
- キウイ1個
農林水産省:食育実践ナビ
妊婦は上記の果物3つ分、つまり300g食べれば良いことになります。そしてキウイ1個がほぼ100gであるため、1日当たり3個までならOKです。これは、妊婦が1日に必要な葉酸量のおよそ1/4に当たります。
さらにキウイのみで妊婦が1日に必要な葉酸400μgを賄おうとすると、単純計算で11個以上必要となります。この量を1日で食べるのは現実的ではありません。また果物の推奨量を大幅に超えることになります。
したがってキウイはあくまで、デザートやおやつとして、食事では足りない栄養素を補うものだと考えると良いです。
妊娠中にキウイを食べ過ぎてはいけない理由
キウイに限らず、果物には水分が多く含まれています。そのため過食すると、体を冷やしてしまう懸念があります。
暑い夏ならまだしも、それ以外の時期に果物を多く摂ると確実に体を冷やし過ぎてしまいます。妊婦の冷えは、血流の悪化やお腹が張りを招きやすく、結果的に早産につながる場合もあります。したがって果物の過剰摂取には、十分気を付けた方が良いです。
さらに果物(キウイ)の食べ過ぎは、糖質過多を招くこともあります。糖質とは、炭水化物の量から食物繊維の量を引いたものを指します。キウイ1個あたりの糖質は、11gです。妊婦の果物摂取は3つ(300g)が望ましいため、仮にキウイを3個食べた場合33gの糖質を摂ることになります。
果物の糖質は、太りやすいとの指摘もあります。妊婦の体重が増えた場合、妊娠高血圧症候群のリスクが高まってしまいます。母子手帳にも高血圧症候群の予防について、以下のような記載があります。
- 睡眠、休養を十分に摂る
- 過労を避ける
- 適正な体重増加(太り過ぎない)が重要
ただし前述の通りキウイには妊婦に必要な栄養が豊富に含まれているため、食べ過ぎなければ問題はありません。カロリーもキウイ1個当たり53kcal(ゴールドは59kcal)と低めで、むしろ間食で砂糖の入った甘いお菓子などを食べるよりはマシといえます。
冷えや糖分過多につながらないよう、食べるなら1日当たり3個までを上限にキウイを上手に妊婦生活の中に摂り入れてみて下さい。
妊活・妊娠中の葉酸摂取は、葉酸サプリの併用がおすすめ
このように妊娠中に必要な栄養素が含まれるキウイは、食べる量を守ればおすすめの果物です。
野菜ではほうれん草やブロッコリーなどの葉物野菜にも、葉酸は多く含まれます。しかし、いずれも茹でるなど調理が必要です。その点、キウイはカットするだけで手軽に食べることができます。
また葉酸は水や熱に弱いビタミンですが、キウイの場合は水にさらしたり加熱したりする必要がありません。丸ごと栄養素を摂取できるのが最大の魅力です。
ただしキウイなどの果物から葉酸を摂取すると、冷えや糖分過多を招く恐れがあるため果物のみから葉酸を摂取することはおすすめしません。
また、野菜や果物だけで葉酸を摂取することを妊娠中に意識するのは、大きな負担になることもあります。このとき葉酸サプリメントを活用すると、効率的な葉酸摂取が可能なだけでなく、食事に関する精神的な負担も軽減させることができます。
葉酸サプリメント1粒には、たくさんの栄養素が凝縮されています。例えばベルタという葉酸サプリでは1日4粒飲むことで妊婦が必要な葉酸が摂取できます。そのほか、ビタミン、ミネラル、鉄分、カルシウム、さらには美容成分に至るまで網羅されています。
実際、私も飲んでいましたがつわりなどで食事がうまく摂れなかったり、作れなかったりしたときにも「サプリを飲めば大丈夫」という安心感がありました。そのため、「頑張って食べなければ」と食事が負担になったことはありません。
そして妊娠中に何のトラブルもなく元気な赤ちゃんを出産できたのは、やはり葉酸サプリによるところも大きいと思っています。
またベルタ葉酸の成分を確認してみると、キウイなどの果物の摂取で気になる糖分(麦芽糖など)は一切含まれていませんでした。
ただしドラッグストアに売られている葉酸サプリメントは、コストを下げるために糖分でかさ増ししているものがほとんどであるため、注意が必要です。
サプリメントであれば、果物のように体を冷やすこともありません。栄養摂取の基本は食事からが望ましいですが、妊娠中は赤ちゃんと自分の健康を守るためにサプリの力を借りるのも1つの選択肢です。
実際に厚生労働省も、葉酸が熱や水に弱く、体内での吸収率が半減することを考慮してサプリメント(モノグルタミン酸型葉酸)の摂取を推奨しています。
食品に含まれる葉酸(ポリグルタミン酸)は吸収しやすいよう、消化されてモノグルタミン酸型の葉酸に変えられます。その後、初めて体内で吸収されていきます。このような代謝の過程においても、葉酸量は減ってしまいます。一方でサプリメントに含まれる葉酸はあらかじめモノグルタミン酸型になっているため、ほぼ100%吸収できるのです。
厚生労働省では葉酸サプリメントを摂取する時期について、妊娠する1ケ月前からを推奨しています。これは多くの人が妊娠に気づく頃には、すでに赤ちゃんの神経管が作られていることが関係しています。葉酸を早めに摂取することで、初めて神経管閉鎖障害の予防効果が発揮されるのです。
さらに葉酸には造血作用や細胞分裂を助ける働きがあります。そのため妊娠を望むとき、つまり妊活中から葉酸を摂取して赤ちゃんを迎える準備をしておくことが理想です。
このように妊活及び妊娠中の女性は、キウイなどの葉酸を含む食べ物と併用して葉酸サプリを活用することがおすすめです。サプリを活用しながら、効率よく葉酸を摂取しましょう。その際は、必ず添加物や安全面に考慮した葉酸サプリを選ぶようにして下さい。
まとめ
キウイ1個(100g)には、葉酸が36μg(ゴールドでは32μg)含まれています。そのほかビタミンCや食物繊維、カルシウムなど妊婦に必要な栄養素も豊富に含んでいます。
キウイは葉物野菜とは違い、特に調理する必要がありません。さらに実の部分を水や熱にさらす必要もないため、キウイに含まれる栄養素を丸ごと摂取することができます。
ただしキウイのみで、妊婦が1日に必要な葉酸400μgを賄おうとすると、11個食べる必要があります。果物の食べ過ぎは冷えや糖分過多を招くため、キウイなら1日3個までを目安にするのが基本です。
そこで、葉酸を補うために葉酸サプリメントが役立ちます。葉酸サプリメントであれば、糖分過多や冷えを気にする必要もありません。
厚生労働省も葉酸サプリメントの摂取を推奨しています。葉酸は造血作用や細胞分裂も促すため、妊活中の女性にもおすすめです。ただしドラッグストアなどに売られている商品は、かさ増しのために糖分やそのほかの添加物が入っている場合が多いためおすすめできません。
妊活、妊娠中は常にバランスよく栄養を摂る必要があります。食事と併用して、安心、安全な葉酸サプリメントを選び、賢く活用してみましょう。