胎児の奇形を防ぐ!葉酸のメカニズムと不足による影響を学ぶ

公開日: : 最終更新日:2019/04/01 葉酸

妊娠すると、誰もが元気な子供が生まれてほしいと望みます。しかし、いくつかの先天性の奇形が存在することも事実です。その1つに神経管閉鎖障害があります。

神経管閉鎖障害について、2002年から母子手帳に記載されるようになりました。この障害は、葉酸を摂取することで一定のリスクを低減できることがわかっています。

しかし「神経管閉鎖障害とは、どのような障害であるか」や「葉酸がどのようなメカニズムで、何に対して効果があるのか」について詳しく知っている人は少ないです。「何となく大事そうだから」と感じ、葉酸を摂取しているのが実情です。

そこで今回は葉酸不足が招く奇形「神経管閉鎖障害」や葉酸の重要性について、解説していきます。

葉酸不足が招く赤ちゃんの奇形とは?

神経管閉鎖障害について、母子手帳には以下のように書かれています。

  • 二分脊椎などの神経管閉鎖障害の発症を減らすために、葉酸が重要である
  • 神経管閉鎖障害とは、脳や脊髄のもととなる神経管がうまく形成されないことにより起こる障害である
  • 遺伝など多くの要因が複合して起こる

これを読んだとき、私は神経管閉鎖障害についてよく理解できず「とにかく葉酸が大事なんだ」と認識した程度でした。しかし実際に調べてみると、神経管閉鎖障害とは赤ちゃんの生涯に渡り影響を与える障害であることがわかりました。

神経管障害の「神経管」とは、脳や脊髄の細胞の集合体です。神経管が細胞分裂を繰り返す中で、胎児の脳や脊髄が作られていきます。下のイラストは、脳や脊髄ができる過程を示したものです。

出典:「二分脊椎と水頭症の絵本ガイド」

左のオタマジャクシのような形が、妊娠4週目頃です。このときは、神経「管」ではなく、神経「板」です。それが胎児の成長に伴い、ジッパーのように閉じることで管が作られていきます。このとき管が正しく作られない場合、二分脊椎になってしまいます。

二分脊椎になると、脊椎の下部(お尻の上辺り)の皮膚が膨れたり、穴が開いたりします。

出典:「二分脊椎と水頭症の絵本ガイド」

障害の起こる場所や程度は様々であり、名称もそれに伴い「脊髄披裂、硬膜披裂、脊椎披裂、皮膚洞」と呼ばれます。具体的には、以下のような症状が表れます。

  • 水頭症、けいれん、股関節脱臼、学習障害などの合併症を併発することが多い
  • 歩行や排せつ障害の治療や様々なリハビリが必要になることがある
  • 多くの場合、出生後早急に背中の手術が必要になる

二分脊椎の場合、脊椎の下部で閉鎖障害が起こるのに対し、上部で閉鎖障害が起きた場合は無脳症になります。無脳症は、大脳の半分に折損や縮小を持つ奇形児であることが多いです。下のイラストのうち、真ん中のBが無脳症の状態です。

引用:「脳科学辞典」

正常な神経管はイラストAのような順で閉鎖します。しかしBの無脳症の場合は、2の閉鎖に障害が起こっています。無脳症の場合、流産や死産の確率が高く、生命の維持が難しい場合が多いです。ちなみにCのように脊椎の下部(5)に閉鎖障害が起こると、二分脊椎になります。

このように一言で神経管閉鎖障害といっても、どの部分の神経に障害が起こるかで症状も変わってきます。ただ1つだけ共通しているのは、いずれも妊娠初期に起こる先天性の障害であるということです。

厚生労働省によると、神経管閉鎖障害発生の確率は「1998年で出産(死産を含む)1万人のうち6人、そのうち二分脊椎が3.2人」となっています。

出典:平成12年 厚生労働省「神経管閉鎖障害の発症リスクの低減に関する報告書」より

日本の出生数(2018)はおよそ94万人であるため、神経管閉鎖障害の発症は年間約570人の割合で起こることになります。グラフのように日本では二分脊椎の発症が増加傾向にあるため、2000年から妊娠可能な女性に対して葉酸摂取に関する通知が出されました。その後、2002年から母子手帳への記載が始まりました。

厚生労働省によると神経管閉鎖障害の発症は、染色体異常、遺伝子の突然変異、環境からの因子など複数の要因があるとしています。そして環境因子の一つに、葉酸不足があると考えられています。

奇形防止に効果あり!諸外国の葉酸摂取の実情

このように葉酸摂取の重要性を国レベルで推奨するようになったのには、理由があります。それは諸外国において「神経管閉鎖障害のリスク低減に葉酸摂取が一定の効果を上げている」という事実です。

最初に葉酸摂取を勧告したのが、アメリカです。1992年には妊娠可能なすべての女性に対して、葉酸の摂取を勧告しています。さらに1998年からは、食事からの葉酸だけでなく、葉酸サプリメントや葉酸強化食品による摂取を推奨しています。

このような早期の対応により、2000年10月にアメリカのサウスカロライナ州で、「神経管閉鎖障害の発症が半減した」と報告されました。このとき、特に二分脊椎の発症リスクについて効果がありました。

イギリスでも、葉酸摂取による効果が顕著に表れました。イギリスはもともと神経管閉鎖障害(二分脊椎)の発症率が高く、1974~1979年には1万人に対して15人ほどの発症でした。

そのため1960年代から調査等が行われ、1992年に妊娠を望む女性に葉酸を含む食品などの摂取を勧告しました。その結果、イギリスの神経管閉鎖障害の発症は90%以上低減しました。

出典:平成12年 厚生労働省「神経管閉鎖障害の発症リスクの低減に関する報告書」より

中国では1999年にRobertらが妊娠を計画している女性に毎日0.4mg(400μg)の葉酸の錠剤を摂取してもらったところ、「79%ほど神経管閉鎖障害のリスクを低減させることができた」と報告しました。

このような諸外国での成果に習い、日本では2000年から厚生労働省により妊婦の葉酸摂取が推奨されるようになりました。グラフでは神経管閉鎖障害の発症率は緩やかな下降線を辿っているように見えます。ところが二分脊椎のみで見てみると、発症率は上昇傾向にあることに注意が必要です。

さらに葉酸摂取率について、日本先天異常学会のメッセージ(2018.3.27)によると「妊娠女性の葉酸サプリメントの摂取は10~20%に留まり、神経管閉鎖障害の本邦発生率は減少傾向が示されていません」とあります。

神経管閉鎖障害は誰にでも起こり得ます。発症のリスクを下げるために、葉酸の摂取が有効であることを理解しましょう。

葉酸不足が招く胎児への影響とメカニズム

ではどのようなメカニズムで、神経管閉鎖障害の予防に葉酸が役立つのでしょうか。

まず、ミノ酸の一種であるホモシステインの血中濃度が高まることが、神経管閉鎖障害の要因の一つです。ホモシステインとは、動脈硬化を招く危険因子のことです。ホモシステインの上昇は、血中コレステロールを下げる別のアミノ酸(メチオニン)に変換されることで防ぐことができます。

このとき葉酸を摂取するとホモシステインの分解を助け、上昇を抑えてくれる働きがあることがわかっています。そのため、ホモシステインの上昇と関連がある神経管閉鎖障害のリスクの軽減に、葉酸が役立つのです。このメカニズムについて、厚生労働省の報告書には「動物実験で確認されている」との記載があります。

葉酸が赤ちゃんに与える、そのほかの重要な働き

そのほか、葉酸は造血に関わるビタミンであることを知っているでしょうか。造血と言えば鉄分のイメージが強いですが、葉酸も赤血球の形成にかかわる造血ビタミンです。

良い血液が作られると、赤ちゃんへの栄養補給もスムーズです。4人に1人が該当すると言われる妊婦の貧血予防にもつながります。さらに葉酸は細胞分裂に必要な核酸(DNAやRNA)を作る働きもあります。

細胞分裂の際、葉酸が不足すると何らかの奇形が発生してしまう可能性があります。葉酸は神経管閉鎖障害のリスク低減だけでなく、赤ちゃんの成長そのものにも関わっているのです。ここで葉酸の働きをまとめると、以下のようになります。

  • 血液中のホモシステインの上昇を抑え、神経管閉鎖障害のリスクを低減させる
  • 赤血球を形成し、造血する
  • DNAなどの核酸を作り、細胞分裂を助ける

そのほか動脈硬化を予防したり、傷口の治りを良くしたりするなど母体にも重要なビタミンです。そのため厚生労働省の推奨する葉酸サプリメントを摂取して、元気な赤ちゃんを迎える準備をすることをおすすめします。

奇形の予防に、なぜ葉酸サプリメントが効果的なのか

では、なぜ葉酸を食べ物からではなく「サプリメント」の形で摂ることが推奨されるのでしょうか。

まず、食べ物に含まれる葉酸と体内で吸収される葉酸とでは形状が違っています。食べ物に含まれる葉酸は、そのまま体内で吸収できません。そのため、吸収されやすい形に体内で変えられているのです。

葉酸は吸収されやすい形に体内で変換される過程で、量が半減します。例えばほうれん草1把には、およそ420μgの葉酸が含まれています。このほうれん草を水にさらしたり茹でたりすることで、最終的に体内で吸収できる葉酸はおよそ半分の210μgになってしまうのです。

そのため栄養素を丸ごと摂取しようと思うと、半減する分を考慮して多く食べる必要があります。それは妊婦であれば、なおさらです。

一方でサプリメントに含まれる葉酸は、あらかじめ吸収されやすい形の葉酸になっています。具体的には、「モノグルタミン酸」と記載されます。

ちなみに日本人の食事摂取基準(2015)によると、妊婦は1日当たり400μgの葉酸が必要です。しかし、国民栄養・健康調査(平成29年)によると、20~29歳女性の葉酸摂取の平均値は244μg、30~39歳だと237μgです。妊娠していない女性の葉酸必要量はクリアしていますが、妊婦の場合は全く足りていないのが実情です。

このとき、食べる量を増やすことを思いつく人は多いです。しかし食事だけで葉酸を摂る場合、ほうれん草だと茹でたもの100gで葉酸110μgなので、妊婦は1日におよそ400g食べる必要があります。具体的には、写真の量の4倍です。

毎食、このような量の野菜を意識して食べることは精神的なストレスになります。また場合によっては、つわりで食事が摂れなかったり、お腹が大きくなるにつれて調理が難しくなったりする場合も多いです。そういった負担を軽減させ、確実に葉酸を摂取できるものとして、厚生労働省は葉酸サプリメントを推奨しています。

もちろん葉酸サプリメントに頼って、食事が疎かになってはいけません。しかし品質が良い葉酸サプリメントを賢く活用することは、母子の健康に大きな効果をもたらします。

ただし、葉酸サプリメントであれば何でも良いわけではないです。一般の人が使う分には問題なくとも、未熟な胎児への影響を考えると妊婦さんは慎重に商品を選ぶべきです。

胎児の奇形を防ぐ、葉酸サプリメントの見極め方

葉酸サプリメントで葉酸が摂取できても余計な成分が含まれていることも多いため、品質を確認してから購入することが大事です。余計な添加物があると、最悪の場合、胎児の奇形につながるものがあります。

赤ちゃんと自分の健康のために、具体的には以下のような原材料に気をつけましょう。

  • ブドウ糖、マルチトールやスクラロール(人工甘味料)など:糖分過多、遺伝子組み換え食品である場合が多い
  • ショ糖脂肪酸エステル:染色体異常の懸念
  • 光沢剤(シェラック):ラックカイガラムシの分泌物

添加物などを過剰に意識すると、逆にストレスを招くこともあります。ただし、あらかじめ安全性に懸念があるものは、妊娠中は避けた方が良いです。実際に、ドラックストアにもたくさんの葉酸サプリがあります。

しかし、ドラッグストアに置いてあるすべての商品に気になる成分が含まれていたため、私は優れた品質の商品をネットで購入しました。特に妊婦は大丈夫でも、未熟な胎児に障害が出る場合が考えられます。神経管閉鎖障害を防ぐ目的で葉酸サプリを摂取しているにも関わらず、リスクの懸念があるようでは全く意味がありません。

このような事態を避けるために、葉酸サプリメントを選ぶときは原材料名を必ず確認してください。

赤ちゃんのために!効果的な葉酸サプリメントの摂り方

葉酸の効果を知り良いサプリメントを選んだとしても、飲み方を間違っていれば効果も期待できなくなります。中でも神経管閉鎖障害のリスク低減のために、葉酸は妊活中から摂取することが大事です。

日本先天異常学会によると神経管閉鎖障害は、主に妊娠6週目ごろ発症するとされています。これは具体的に受精後28日の頃を指し、妊娠に気づくのがまだ難しい時期です。実際に私が妊娠に気がついたのも、妊娠9週目頃でした。このとき胎児の重さはわずか2gほどです。

しかし、すでに手を元気よく動かしていたのにはびっくりしました。そして正にこの頃、赤ちゃんの神経管の形成は急速に進んでいます。赤ちゃんの成長は目覚ましく、2週間後の11週目には随分、ヒトの形に近づいています。

このときエコーでは、心臓が動いているのを確認でき、とても感動したのを覚えています。手と足までバタバタさせて、短期間で随分大きくなっていました。このような急激な成長を遂げる中で、12週を迎える頃には赤ちゃんの神経管はほぼ完成しています。

このように妊娠に気づくか気づかないか微妙な時期に神経管が作られるため、厚生労働省は葉酸サプリメントの摂取を開始する時期を「妊娠を望む1か月前から」としています。

そのほか葉酸は、摂れば摂るほど効果が上がるわけではないため、摂取量を守ることも大事です。具体的な摂取量は、1日400μgです。サプリメントに記載があるので、必ず守るようにしましょう。

さらに赤ちゃんの健全な発育のために、授乳期を終えるまでを目安に葉酸サプリメントの摂取をおすすめします。細胞分裂を助ける葉酸が授乳期に不足すると、発育の遅れが見られる場合があります。

このように葉酸は神経管閉鎖障害のリスク低減だけでなく、赤ちゃんの成長に直接関わっている重要なビタミンです。

まとめ

葉酸不足が原因の1つである先天性の奇形に、神経管閉鎖障害があります。これは妊娠のごく初期に神経管が正常に閉鎖しないことで起こる障害です。神経管の上部に障害があると、無脳症、下部では二分脊椎を発症します。

葉酸を摂取することで、神経管の閉鎖障害に関与しているホモシステインの上昇を抑えることができます。さらに葉酸には赤ちゃんの細胞分裂を助けたり、妊婦の貧血を予防したりする効果もあります。

妊娠前からできる準備として、赤ちゃんと自分のために葉酸サプリメントを摂取することをおすすめします。葉酸サプリメントに含まれる葉酸は、あらかじめ小腸で吸収しやすいモノグルタミン酸型になっているためほぼ100%吸収できます。

ただし葉酸サプリメントを摂りさえすれば良いわけではありません。葉酸の摂取と共に食事のバランスに気を配ったり適度な運動をしたりすることも大事です。

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