妊娠中は、たくさん食べているのに常に「お腹が空いている」と感じたり、糖分をたっぷり含んだ甘いお菓子が無性に食べたくなったりする妊婦さんが多いと思います。「赤ちゃんのために食べなきゃ!」と欲求のまま食べていると、妊婦健診で急激な体重増加を指摘されることもあるでしょう。
私自身、妊娠中の急激な体重増加に悩まされました。つわりがあまりひどくなかった影響もあり、常に食欲が湧いていたのです。
妊娠すると、母体は「栄養を確保しよう」という働きが強くなるため、いくら食べても食欲が収まらず太りやすくなります。しかし、急な体重の増加や太り過ぎは、妊婦特有の病気や出産時の悪影響を招くことがあるため、注意が必要です。
今回、妊娠時期に分けて「食欲増加の原因や身体への影響を知り、止まらない食欲と上手に付き合う3つの対策」について伝授したいと思います。
もくじ
妊娠中の食欲増加はいつから?その影響は?
妊娠中の食欲の増加は、安定期後の妊娠中期から後期に多くみられます。しかし人によっては、妊娠超初期の段階から食欲が抑えられなくなることがあります。こればかりは個人差が大きく、妊娠してみないと分かりません。
「妊娠中はお腹の赤ちゃんを成長させないといけないのだから、体重が増えてもいいのでは?」と考える妊婦さんもいらっしゃるでしょう。確かに以前は「妊娠中は胎児のために、できるだけ食べて太った方がいい」と考えられていました。
しかし急激な体重増加については、以下のような妊婦特有の病気や出産時の悪影響が指摘されています。
・妊娠糖尿病
妊娠をきっかけに糖尿病になることを「妊娠糖尿病」と呼びます。糖尿病とは、血液中の糖分濃度が高くなり尿中にブドウ糖が排出される疾患です。妊娠によるホルモンバランスの変化や糖の代謝異常によって引き起こされます。
血糖値が高い状態は全身の血管にダメージを与え、様々な合併症(網膜症・腎障害・神経障害など)を引き起こします。
また妊娠中に高血糖状態が続くと、機能が未熟な巨大児が生まれるリスクが高まります。産後も胎児が低血糖になったり呼吸障害が生じたりと危険です。
妊娠糖尿病と診断された場合、まずは食事療法で血糖値のコントロールを行い、それでも改善しない場合はインスリン注射を用いて治療します。
・妊娠高血圧症候群
妊娠中に高血圧(最高血圧140mmHg以上、最低血圧90mmHg以上)、かつ尿中にタンパクが一定量以上検出された場合、「妊娠高血圧症候群」と診断されます。
妊娠高血圧症候群の原因については未だ解明されていませんが、「胎盤形成時のエラーで血管に障害を引き起こす物質が放出されるからではないか」と考えられています。
妊娠高血圧症候群は重症化すると母体では、けいれん発作や肝臓・腎臓の機能障害がみられ、胎児は発育不全や最悪の場合、死に至るなど大変危険な状態に陥ります。
妊娠高血圧症候群と診断された場合、安静と入院を中心とした治療を行います。
・出産時の影響
体重増加によって産道に脂肪が付きすぎると、出産のときに赤ちゃんが産道を通りにくくなります。出産が長引きママの体力も奪われるため、難産になるリスクが高まるのです。
・産後の影響
妊娠中に体重が増えすぎてしまうと、産後に体型が戻らなくなる可能性があります。見た目が変わってしまうだけでなく、腰痛など身体の不調を招くこともあります。産後のことも考えて体重管理は重要です。
妊娠時期ごとの食欲増加の理由について
それでは、妊娠中の食欲増加の原因について、妊娠超初期・初期、中期、後期・臨月の各時期に分けて、その理由についてみていきましょう。
妊娠超初期や初期に食欲が増加するのはホルモンが関係
妊娠超初期(0~4週)の食欲の増加は、妊娠が判明する生理予定日前にみられます。これは生理前にみられる食欲増加と同じ原因です。
生理1週間前になると女性ホルモンの一種、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が増えます。黄体ホルモンには、妊娠に備えて赤ちゃんのために水分や栄養分を取り込む作用があります。
生理後は黄体ホルモンの分泌が低下するため食欲増加は収まりますが、妊娠している場合はさらに黄体ホルモンの分泌が増加するので食欲が増え続ける人もいます。
妊娠初期(4~7週)に入ると、つわりが開始して多くの妊婦さんは食欲が低下します。一方で、つわりの無い人や食べづわりの人は急激な体重増加に注意しなければなりません。
特にお腹が空くと気持ちが悪くなる「食べづわり」は、常に何か口にしていないと気持ちが悪くなってしまうため、自然と間食回数が増えます。そのため、「気づいたら激太りしていた」という事態に陥ります。
妊娠超初期や初期は妊娠中の体重管理の対象にはなりませんが、体重が急激に増える場合は注意が必要です。
妊娠中期に体重が増えるのは、つわりが治まった反動と胎児が急成長するため
つわりの間は食欲が湧かなかったり、食べてもすぐに吐いてしまったりと食事への楽しみが無くなる時期です。しかし、つわりが落ち着いてくると、ご飯を美味しく食べられるため、それまでの反動で猛烈な食欲が湧いてくることがあります。
また、妊娠中期以降は赤ちゃんの成長が著しくなり、成長に必要な栄養分が母体よりも赤ちゃんの方へ優先して運ばれるようになります。
妊娠中期である妊娠5ヶ月から出産までの間に、赤ちゃんの体重は3倍以上に、羊水や血液量は1.5倍に増えるといわれています。つまり、かなりのスピードでお腹の赤ちゃんとママの体内環境が変化していくのです。
お腹の赤ちゃんが成長するほど、母体はエネルギーが必要となり、血糖値も下がって空腹感を覚えやすくなってしまいます。
さらに、ママが摂った糖質はまず胎児へ送られるようになるため、母体は常に糖分が不足していると感じるのです。
そのため食欲がどんどん高まり、特に身体の中ですぐにエネルギー源となる糖分を欲するようになります。これによりケーキやクッキー・チョコレートなどの甘いものがどうしてもやめられなくなります。
私自身、妊娠中期に甘いものを毎日大量に食べていたため体重が増えすぎて妊婦糖尿病の可能性を指摘されました。私の体重増加に加えて、胎児が週数の割に大きかったためです。妊娠糖尿病の場合、巨大児になりやすいといわれているため先生が「詳しく検査した方がいい」と判断したのです。
結果としては糖尿病にはなっていませんでした。しかし、「このままでは本当に糖尿病になってしまう」と、そのとき初めて真剣に体重管理をしようと決心しました。
妊娠後期・臨月に食欲が増進するのは身体と環境の変化のため
妊娠後期(妊娠8ケ月~10ケ月)に入ると、働いているママも産休に入ります。
「妊娠中期はそんなことなかったのに、妊娠後期に入って急激に食欲が増した」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。仕事中は忙しさで食欲がまぎれることもあるのですが、1日中家にいると食欲の増加を感じずにはいられなくなるでしょう。
また、里帰り出産も体重増加の大きな原因につながります。私の友人はつわりがひどく中期に入っても治まらなかったため、妊娠後期に入ってすぐに里帰りしました。
しかし実家に帰ると料理・掃除・洗濯の全てを母親がしてくれるため甘えきった結果、体重が急増して担当の産婦人科医に怒られたそうです。
このように妊娠後期に入ると身を置いている環境が変わるため、気の緩みによって体重が急増することがあります。
また、臨月に入ると赤ちゃんの位置が下がってくるため母体の胃のつかえが少なくなります。少し食べただけで胃が圧迫されてお腹がいっぱいになっていたのが、いくら食べても苦しくならないので食欲が増進してしまうのです。
止まらない食欲と上手く付き合う3つの対策
妊娠中期に入り妊娠糖尿病の疑いがあった私が実際に行った、食欲と上手く付き合う方法について紹介します。実は私は妊娠6ケ月の時点で、既に妊娠前と比べて体重がプラス8キロにまで増えていました。「出産までにプラス10キロ以内に抑えよう」と決意し以下の3つの方法を試しました。
- 毎日体重計に乗って記録する
- 甘いものの買い置きを止める
- 毎日30分~1時間のウォーキングをする
その結果、目標通り体重をプラス10キロで抑えることができました。つまり妊娠中期から体重の増加を2キロで抑えたのです。「かなり無理をしたのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、特別何かを我慢したわけではありません。
次に具体的なやり方について記します。
・毎日体重計に乗って記録する
体重計に毎日乗るだけで体重増加を抑える効果があります。毎日自分の体重を把握し、それを記録することで自然に自制心が働き、無性に食べたくなるという感覚が減るのです。
一般的に1週間に500g以上体重が増加するようであれば、食生活や運動習慣を見直さなければならないといわれています。
私は毎晩決まった時間に体重を計り、手帳にメモしていました。これだけで食欲が抑えられるのであれば、試してみる価値があるのではないでしょうか。
・甘いものの買い置きを止める
基本的に食べたい欲求を無理に抑えることはしませんでしたが、甘いものの食べ過ぎには気をつけていました。
妊娠中は甘いものが無性に食べたくなります。前述した通り、お腹の赤ちゃんを成長させるため母体では常に多くのエネルギーが必要になるからです。身体の中ですぐにエネルギー源になるブドウ糖を欲するのは自然なことなのです。
しかし、過剰な糖分摂取は妊娠糖尿病や急激な体重増加を招きます。私の場合、家にお菓子があるとついつい全部食べてしまうので買わないようにしました。「どうしても食べたくなったら歩いて買いに行く」と決めて、買い置きを止めることにしたのです。
家になければ大抵諦めがつきました。その代わりにジュースを作って飲んでいました。ヤクルトと牛乳とヨーグルトとバナナのジュースです。
ミキサーなどは使わず、適当にバナナを潰して他の材料を混ぜるだけです。バナナの代わりにフルーツジュースを混ぜたり、ヤクルト・牛乳・ヨーグルトのみにしたりしてもでもおいしいです。ドロっとしているので飲みごたえがあり、腹持ちも良く満足感がありました。
・毎日30分~1時間のウォーキングをする
体重の急激な増加を気にしてから、ウォーキングを開始しました。「余分なカロリーは消費しよう」と毎日30分から1時間は欠かさずに歩いていたのです。ウォーキングは急激な体重増加を抑えるだけでなく、出産に向けてのよい準備運動になるといわれています。
ウォーキングをすることで体力がつくだけでなく、下半身の筋肉が鍛えられ、身体の柔軟性を高めるので安産につながると期待されています。
その他にも血行が促進されて冷えが改善したり、足のむくみが解消したりします。また、臨月に入りウォーキングをすると赤ちゃんの位置が下がってくるのでスムーズに出産を迎えられるといわれています。
ただ、1時間もひたすら歩くのはなかなか難しいと思うので何か目的を持って歩きましょう。「友達の家に遊びに行くのに公共交通機関を使わず徒歩で行く」「遠くのコンビニに行く」「ウィンドウショッピングをする」などです。私がよく目的地にしたのはお気に入りのカフェです。
私は運動があまり好きではありませんが、カフェでのお茶とお菓子を楽しみに往復1時間歩くのは苦になりませんでした。カフェで摂取するカロリーをウォーキングで消費していたのです。家にこもってダラダラ食べ続けるよりも良かったと思います。
まとめ
妊娠中の食欲増加はお腹の赤ちゃんを育てるために自然なことですが、やみくもに食べ続けていると妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病を生じる可能性があります。
また、難産や産後にもトラブルを招くため妊娠中の体重管理には注意が必要です。
安定期に入った時期から、ここで紹介した食欲と上手く付き合う3つの対策を試してみてください。「毎日体重計に乗って記録する」「甘いものの買い置きを止める」「毎日30分から1時間のウォーキングをする」ことは、どれもそれほど難しいことではないでしょう。
ただし、体重が増えることばかり気にしていると、今度は赤ちゃんへの栄養が足りなくなり低体重出産のリスクが高まります。急激な体重の増加には注意が必要ですが、妊娠中は無理なダイエットは禁物です。身体に無理のない範囲で試してみましょう。