葉酸は、妊娠初期に形成される「赤ちゃんの神経管」が正常に作られるのを助けます。そのため2002年から母子手帳にも葉酸の重要性について記載されるようになりました。

厚生労働省では妊娠1ケ月前から、モノグルタミン酸型の葉酸(葉酸サプリメント)の摂取を推奨しています。

このような流れもあり、葉酸サプリメントのほかにも葉酸を気軽に摂ることができる葉酸キャンディなどの商品がマタニティコーナーに置かれています。

それでは、このような葉酸キャンディ(飴)やグミサプリでも、問題なく葉酸を摂ることができるのでしょうか。そこで今回は、葉酸キャンディの効果と問題点について解説していきます。

薬局やドラッグストアにもある葉酸キャンディ(飴)

みなさんはドラッグストアなどのマタニティコーナーに行ったことがあるでしょうか。実際に出向いてみると、妊婦用サプリメントや食品類がたくさん並んでいます。つわり専用のサプリメントや母乳の出を良くする飲み物など、その種類は実に様々です。

中でも葉酸は赤ちゃんの神経管閉鎖障害を防ぎ、細胞分裂を助ける重要な栄養素です。そのため葉酸を含む商品はサプリメントだけでなく、「葉酸キャンディ」という形でも販売されています。

写真の葉酸キャンディの場合、2粒食べると妊婦が1日当たりに必要な400μgの葉酸を摂ることができます。値段は、10日分で311円です。実際に食べてみると、普通の飴と変わりません。マスカットの風味が口に広がり、何個でも食べることができそうな感じがしました。

また同じように葉酸を手軽に摂取できるものとして、「グミサプリ」もあります。

グミサプリとは「おやつのグミの感覚で栄養素を気軽に摂取する」ことを目的に作られた商品です。葉酸を摂ることができるグミサプリの場合、グミ3個で360μgの葉酸を摂ることができます。グミ特有のモチモチとした固めの食感で、こちらもおやつ感覚で食べることができます。

そのほか葉酸タブレットもあり、葉酸を美味しく気軽に摂取できる商品がとても充実しています。

しかし妊婦がドラッグストアなどでマタニティ関連の食品を購入するのには、注意が必要です。なぜなら余計な添加物が含まれている可能性が高いからです。

妊婦が口にしたものは、胎盤を通して直接赤ちゃんへと届けられます。そのため購入するときには、余計な添加物が入っていないかを必ず確認することが重要です。

妊婦には葉酸キャンディをおすすめしない理由

では実際に、葉酸キャンディの成分を見てみましょう。実際の成分は以下の通りです。

還元パラチノース、還元水飴、マスカット濃縮果汁、レモン濃縮果汁/酸味料、香料、甘味料(アセスルファムK、スクラロース)、着色料(紅花黄、クチナシ)、V.B6、葉酸、V.B12

成分表は、含有量の多い順に記載されます。写真の葉酸キャンディの場合、一番多い成分は還元パラチノース(人工甘味料)です。

そのほかにも、数種類の人工甘味料が加えられています。人工甘味料は砂糖よりもカロリーが少なく、強い甘みを持つのが特徴です。そのため多くのダイエット食品やスポーツ飲料、お菓子など様々なものに使われています。しかし健康面について、多くのデメリットが指摘されているのも事実です。

具体的には、以下の問題点が指摘されています。

【還元パラチノース】

  • でんぷん由来の人工甘味料
  • 原料に遺伝子組み換え食品が使われている可能性が高い。

【還元水飴】

  • 水飴に水素を添加して作られた人工甘味料
  • 原料のとうもろこしが遺伝子組み換え食品である可能性が高い。

【アセスルファムK】

  • カロリーはないが、砂糖の200倍の甘さをもつ。
  • 酢酸を原料とし、発がん物質である塩化メチレンが含まれている。
  • 動物実験で脳機能障害や甲状腺障害の原因になる可能性が指摘されている。

【スクラロース】

  • 砂糖の600倍の甘さをもつ。
  • 人体に有害な塩素を分子構造に含む。
  • ラットの腸内細菌を殺す作用が確認されている。
  • 成長の遅れ、赤血球の減少、肝臓細胞の異常、卵巣収縮などの原因になるといわれている。

人工甘味料は多くの食品に使われているため、量を守れば大丈夫と思われるかもしれません。しかし胎児は未成熟な状態であるため、影響を受ける可能性が高いです。

また人工甘味料の問題点は、依存性が指摘されていることです。強い甘みがあるため感覚が鈍ってしまい、また食べたくなってしまうのです。マウスに人工甘味料を与え続けたところ、そのマウスは糖尿病になってしまったという実験結果も出ています。

妊娠中は赤ちゃんへブドウ糖を供給するため、胎盤からインスリンの分泌を抑えるホルモンが出ます。その影響でインスリンの働きが悪くなるため、ただでさえ妊娠中は血糖値が上がりやすくなります。そのような中、日常的に飴を摂取していたらどうでしょうか。単純に考えても、血糖値を上げてしまうリスクが高まることがわかります。

人工甘味料は砂糖に比べて血糖値が上がりにくいですが、上がらないわけではないのです。そして妊婦が高血糖(糖尿病)になってしまうと、母子ともに以下のようなたくさんの弊害が出てしまいます。

【妊婦への影響】

  • 妊娠高血圧症候群
  • 羊水量の異常
  • 肩甲難産
  • 網膜症
  • 腎症およびそれらの悪化

【赤ちゃんへの影響】

  • 流産
  • 形態異常
  • 巨大児
  • 心臓肥大
  • 低血糖
  • 多血症
  • 電解質異常
  • 黄疸
  • 胎児死亡など

実際に私の叔母は妊娠中に血糖値が上がってしまい、糖尿病を発症しました。そして私の従姉妹に当たる赤ちゃんは、巨大児として生まれました。今は成人していますが、現在も肥満傾向にあります。

日本糖尿・妊娠学会によると以下に該当する人は、さらに妊娠糖尿病になるリスクが高まることもわかっています。

【糖尿病になりやすい要因】

  • 家族に糖尿病患者がいる
  • 肥満
  • 35歳以上の高齢出産
  • 原因不明の習慣性流産を経験
  • 強度の尿糖陽性もしくは2回以上反復する尿糖陽性
  • 妊娠高血圧症候群
  • 羊水過多症

「糖尿病になりやすい要因」に1つでも当てはまるようなら、糖分の摂取に人一倍注意を払うことが大事です。ちなみに、前述の叔母も「家族に糖尿病患者がいる」「肥満」「35歳以上の高齢出産」の3つの項目が当てはまっていました。

赤ちゃんの健全な発育のために葉酸は重要です。しかし余計な糖分を多く含む葉酸キャンディは糖分過多を招き、母子の健康リスクが懸念されます。そのため妊婦用の食品として、葉酸キャンディはおすすめできません。

妊娠中は血糖値の上昇に注意する必要があり、余計な糖分を摂らないことが重要であることを理解しましょう。

葉酸キャンディではなく、食事とサプリメントから効果的に葉酸を摂取する

では、どのように葉酸を摂取するのが良いのでしょうか。その方法は、大きく分けて2つあります。1つは葉酸を多く含む食べ物を知り、それらを使った料理を意識して食べることです。

葉酸が多い食べ物は野菜の場合、以下のようになります。

  • 枝豆135μg(さや付き100g)
  • とうもろこし132μg(ゆで1本)
  • 茎にんにく120μg(ゆで10本)
  • ケール116μg(1/2枚)
  • アスパラガス102μg(ゆで3本)
  • ほうれん草110μg(ゆで1/2把)
  • 芽キャベツ110μg(ゆで5個)
  • ブロッコリー99μg(ゆで1/2個)
  • 春菊96μg(ゆで4株)
  • なばな93μg(ゆで1/4把)
  • そら豆90μg(ゆでカップ1杯)

上記以外にもパセリやクレソンなど葉酸を多く含む食品があります。しかし一度に食べる量が限られるため、おすすめは上記の野菜になります。

この中でもほうれん草は葉酸が多い上、鉄分も含まれているため妊娠中に食べる野菜としておすすめです。私はほうれん草を使って、以下のような簡単なメニュー(ほうれん草の磯辺和え)で妊娠中に度々食べていました。

【作り方】

  1. ほうれん草を茹でる。その後、ほうれん草を水にさらしてよく洗う。
  2. 1の水気を絞って、適当に切る。
  3. 2にちぎった焼き海苔を加え、醤油で和える。

焼き海苔(2枚)にも葉酸が48μg含まれるため、葉酸強化メニューとしておすすめです。ただしほうれん草に含まれるシュウ酸は鉄と結びついて体内での吸収を妨げるため、茹でた後は必ず水で洗うことが大事です。

食後のデザートやおやつとしておすすめの果物は、いちごです。5個食べることで葉酸70μgを手軽に摂取できます。ライチを5個食べても、同様に70μgの葉酸を摂ることができます。

このようにまずは食事から葉酸を摂ることを基本として下さい。その上でおすすめの方法が、厚生労働省も推奨する「葉酸サプリメントの摂取」です。

例えば妊娠中につわりで食事が摂れないときも、サプリメントから確実に葉酸を摂取できると安心です。また月齢が進み調理をするのが大変になったときにも、葉酸サプリメントがあれば栄養のバランスを保つことができて便利です。

妊娠中は、添加物を避けて効果の高い葉酸サプリメントを選ぶ

ただし葉酸サプリメントであれば、どのような製品でも良いわけではありません。特にドラッグストアにある葉酸サプリメントには余計な添加物が含まれているため、妊婦用としてはおすすめできません。

近所のドラッグストアには、5種類ほどの葉酸サプリメントがありました。

ドラッグストアのサプリメントは値段が手頃で、気軽に購入できるのが利点です。しかしラベルを確認すると、妊婦用としては気になる成分が多いです。

含有量が一番多いのが麦芽糖です。前述の通り、妊婦は糖分の過剰摂取に注意が必要です。デキストリンは体内で中性脂肪に変化するため、過剰摂取すると肥満や血糖値の上昇が懸念されています。

セルロースは植物から採れた繊維ですが、安全性が確認されていないものもあります。ショ糖脂肪酸エステルは、染色体異常の発症が指摘されています。

では、ドラックストアにある「妊婦専用の葉酸サプリメント」はどうでしょうか。以下は、大手の赤ちゃん用品メーカーの葉酸サプリの成分です。

マルチトール粉糖(砂糖、マルトデキストリン)りんご果汁粉末、グレープフルーツ果汁粉末、粉末はっ酵乳(殺菌)、ミルクエキスパウダー/焼成カルシウム、酸味料、セルロース、ショ糖エステル、ピロリン酸鉄、糊料(プルラン)、香料、着色料(紅花黄、クチナシ、V.B2)、V.B6、葉酸、甘味料(スクラロース)、V.B12、V.D

この中で一番多い成分は、マルチトールです。マルチトールとは、糖を化学反応させて作る糖アルコール(人工甘味料)の一種です。そのほか、果汁粉末やスクラロース(人工甘味料)も糖分です。

妊婦用のサプリメントは飲みやすさを重視するため、人工甘味料や果汁が入っている傾向にあります。人工甘味料は砂糖に比べて血糖値が上がりにくいだけで、血糖値を上げないわけではありません。糖分過多や腸内細菌への影響も気になります。

さらに染色体異常の発症が懸念されているショ糖エステルも含まれています。このように安全面を第一に考えると、ドラッグストアの商品はたとえ妊婦用に作られたものであっても、おすすめできないのが実情です。妊活用として葉酸サプリメントを選ぶ場合も同じです。

おすすめは、余計な添加物を含まず鉄を含む葉酸サプリメント

ではおすすめできる葉酸サプリメントとは、一体どのような製品なのでしょうか。

まず第一に葉酸キャンディのように余計な糖分や添加物を含んでいるものは、避けるようにします。例えば、無駄な添加物が含まれていない、ベルタという葉酸サプリメントの成分は以下の通りです。

乾燥酵母、葉酸含有酵母、もろみ酢粉末、ミネラルイースト、ヨウ素含有酵母、卵殻膜粉末、燕の巣加工品、馬プラセンタエキス末、フィッシュコラーゲン、乾燥野菜粉末(大麦若葉、ケール、ブロッコリー、キャベツ、大根葉、かぼちゃ、さつまいも(紫芋)、チンゲン菜、パセリ、人参、セロリ、苦瓜、ほうれん草、桑の葉、モロヘイヤ、よもぎ、白菜、アスパラガス、トマト、野沢菜、れんこん)、ナンノクロロプシス、乳酸菌末、微細藻由来DHA・EPA油/貝殻末焼成カルシウム、セルロース、ピロリン酸、第二鉄、ステアリン酸Ca、ビタミンC、クエン酸、リン酸カルシウム、ラクトフェリン、ビタミンB6、ビオチン、サンゴカルシウム、β-カロテン、ヒアルロン酸、葉酸、抽出ビタミンE、ナイアシン、パントテン酸Ca、酸化防止剤、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンB12

成分の中で一番多いのは、乾燥酵母です。葉酸に酵母を含ませることによって、体内により長く葉酸を滞在させる効果があります。そのほか野菜を21種類使い、余計な添加物も含まれていません。

甘味料や砂糖類も一切入っていないため、血糖値の上昇を心配する必要がありません。さらに以下の通り、ビタミン13種類、ミネラル14種類、アミノ酸20種類を摂ることができます。

このように様々な種類の栄養素を毎回食事から摂るのは、実際のところ難しいです。

そして妊婦は出産に向けて血液が最終的には50%も増えることから、造血に関わるビタミンを摂取しておくことも大事です。その点についても赤血球を作る葉酸に加え、ヘモグロビンの形成に関わる鉄分とその吸収を助けるビタミンCもきちんと補うことができます。

仮に妊婦が貧血になってしまうと倦怠感などの慢性的な不調だけでなく、低体重のリスクが1.3倍、早産のリスクが1.2倍になることが米ハーバード大学の研究で分かっています。さらに貧血の状態で出産すると、母体に危険が及ぶこともあります。

当然のことながら、妊娠中は赤ちゃんの発育と母体の健康のために様々な栄養素を摂取する必要があります。

しかし妊娠中に食事を通じて栄養素を摂ることが、ストレスになってもいけません。そういう意味でも鉄分を含む高品質の葉酸サプリメントを活用することは、賢い選択だといえます。

まとめ

葉酸は赤ちゃんの神経管の形成を助け、細胞分裂を促します。さらに妊娠・授乳期の貧血を予防するなどの効果があります。そのため葉酸を手軽に摂取する目的で、ドラッグストアや薬局には葉酸キャンディが売られています。

しかし葉酸キャンディには、甘みとして人工甘味料が数種類使われています。人工甘味料はカロリーが低く、砂糖よりも甘いという特性があります。しかし発がん性物質を含むなどの指摘もあり、安全性が保証されているわけではありません。また日常的に飴を食べることは、糖分過多を招く可能性が高いです。

妊婦の血糖値が上がり糖尿病になると、健康リスクが高まります。最悪の場合、胎児の死亡に至る場合もあります。高齢出産や肥満体型、家族に糖尿病患者がいる方はより一層、注意が必要です。

葉酸の摂取方法として、食事のバランンスを整えることを基本とします。中でもほうれん草は、葉酸と鉄分の両方を含むため、おすすめの野菜です。そして食事と併用して、葉酸サプリメントを摂取すると良いです。

葉酸サプリメントを選ぶときは、余計な糖分や添加物を含まないものを選びましょう。また妊婦の40%程度が貧血になるといわれているため、サプリメントからも鉄分も補えると安心です。赤ちゃんと自分のために糖分が含まれる葉酸キャンディではなく、高品質のサプリメントから葉酸を摂るようにするといいです。