子宮筋腫は決して珍しい病気ではありません。子宮筋腫を持つ女性が妊娠を望んだとき、様々な心配事があると思います。

「無事に妊娠できるのか」「流産のリスクはあるのか」「通常分娩はできるのか」など妊娠・出産に関して色々考えてしまうでしょう。

まず、妊娠を考えたときに多くの女性が始めるのが「葉酸サプリメントの摂取」です。これについて子宮筋腫がある場合、「本当に葉酸を摂取して大丈夫なのか」「葉酸によって子宮筋腫が大きくならないのか」など不安がよぎるでしょう。

今回は妊娠を考えている子宮筋腫を持った女性のために、「子宮筋腫を伴った妊娠・出産におけるリスクや葉酸サプリメント摂取での影響、子宮筋腫を大きくしないためにできることなどについて述べていきます。

子宮筋腫は良性の腫瘍のこと

子宮筋腫とは、子宮にできる「良性の腫瘍」のことです。一方で、腫瘍の中でも子宮頸がんや子宮体がんは悪性の腫瘍を指します。

子宮筋腫はできる場所によって名称が異なります。子宮の内側にできたものを「粘膜下筋腫(ねんまくかきんしゅ)」、子宮筋肉の中にできたものを「筋層内筋腫(きんそうないきんしゅ)」、子宮の外側にできたものを「漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ)」と呼びます。

「なぜ子宮筋腫ができるのか」という原因については今のところ解明されていませんが、女性ホルモンの影響で筋腫が大きくなり、閉経すると自然に小さくなることが分かっています。

子宮筋腫があると月経量が多くなったり、生理痛が強かったりします。また、月経以外の出血や腰痛・頻尿・貧血などの症状が見られます。

子宮筋腫は大きさや数が人それぞれです。数個から数十個以上の子宮筋腫が生じることもあります。サイズも豆粒くらいのものから、握りこぶしくらいのものまで様々です。

したがって子宮筋腫によって生じる症状は人それぞれ異なります。

・子宮筋腫は珍しい病気ではない

冒頭で述べた通り子宮筋腫は決して珍しい病気ではなく、日本産科婦人科学会によると30歳以上の20~30%の女性に子宮筋腫が見られます。

症状が無い場合、妊娠をしてから子宮筋腫に気づく場合や不妊治療で検査して発見されることもあります。

子宮筋腫があるからと言って妊娠できないわけではありません。ただし、いくつかのリスクを伴うことは事実です。これには不妊症や流産などがあります。

子宮筋腫があると妊娠しにくい?流産しやすい?

子宮筋腫の場所や大きさによっては妊娠・流産に影響を与えてしまいます。

このとき、筋腫が10センチ以上になると着床障害が起きやすくなると言われています。子宮筋腫が精子や卵子の移動を妨げるため、妊娠しにくくなるのです。

また子宮筋腫が5センチ以上のとき、子宮筋腫を伴いながらの妊娠では、以下の合併症が出現しやすいと言われています。

  • 切迫流産
  • 早産・逆子
  • 羊水量の異常
  • 高血圧
  • 前期破水(陣痛開始前に羊水が流れ出てしまうこと。感染症のリスクが高まる)
  • 常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり:分娩より前に胎盤が剥がれて大量出血を生じ母子共に危険のある病気)

なぜ、これらのリスクが高まるかというと子宮筋腫が血液の流れを悪くしたり、子宮の形を変形させたりするからです。

したがって、妊娠前に子宮筋腫が見つかった場合、場所や大きさによっては手術で筋腫を摘出します。この場合、日帰りから数日程度の期間で手術を行います。

また、「手術後どのくらいで妊活してもいいのか」と疑問に思う方も多いでしょう。

手術の経過にもよりますが、子宮内膜が傷ついていなければ3ヶ月程度、傷がある場合は3~6ヶ月程度は間隔を空けなければなりません。その後は問題なく妊活をして大丈夫です。

子宮筋腫の出産への影響は?

また子宮筋腫があって妊娠した場合、出産はどうなるのでしょうか。実際、高齢妊娠や晩婚化によって子宮筋腫を伴いながら妊娠・出産を迎える妊婦の割合は0.5~2%と言われており、この割合は増加傾向にあるとされています。

子宮筋腫があったとしても胎児が問題なく成長するケースが大半です。しかし妊娠すると、女性ホルモンの影響で子宮筋腫が大きくなることがあります。その場合、胎児の成長の妨げになったり、前述した流産や早産のリスクが高まったりします。

ただ出産のときは子宮筋腫が子宮の出口付近にある場合、通常分娩だと産道の妨げになるため帝王切開になることがあります。

一方で筋腫が「子宮の外側に伸びていく位置(子宮の出口ではない位置)」にある場合は産道をふさぐ心配はないため、膣からの出産になります。

また筋腫のサイズや位置によっては陣痛を弱くすることがあるため、分娩促進剤を使用して出産することもあります。

実際、私の友達にも子宮筋腫を伴いながら妊娠・出産した友達が2人いました。

大きなトラブルはなく1人は通常分娩で出産しました。しかし、もう1人は「筋腫の場所が悪い」ということで、帝王切開で出産しました。

妊娠中は心配事も多かったと思いますが、無事に元気な赤ちゃんが産まれています。

またその友達以外にも、妊娠前に子宮筋腫が見つかり摘出の手術を受けた友人がいます。彼女はその後1年も経過しないうちに妊娠して、無事に出産を迎えました。

友人の話なども含めて私の感覚では、子宮筋腫を伴いながらの妊娠の確率は2%より多いと思います。

そのため、「自分だけが子宮筋腫に苦しんでいるのでは」とは思わず、あまり心配しすぎずに自分ができることを無理しない範囲で進めていくのが良いのではないでしょうか。

子宮筋腫による様々なリスクを低減するため、葉酸を摂取すべき

厚生労働省は妊娠する可能性のある女性へ、胎児の「神経管閉鎖障害(しんけいかんへいさしょうがい)」のリスク低減のために1日400マイクログラムの葉酸の摂取を推奨しています。

神経管閉鎖障害とは、脳や脊髄の元になる「神経管」に障害が起きる病気です。神経管閉鎖障害では、脳の発育が進まない「無脳症」や足の麻痺などを引き起こします。

葉酸はほうれん草やブロッコリー・アスパラガスなどに豊富に含まれており食べ物からも摂取できますが、1日の推奨量の葉酸を摂ろうとすると結構な量の野菜を食べなければなりません。

実際現代人の多くが葉酸不足であると言われています。そこで効率的に葉酸を摂取するために葉酸サプリメントを活用することをお勧めします。

葉酸は子宮筋腫によって引き起こされる「貧血」においても効果的と考えられます。

貧血といえば多くの人が「鉄分が足りていない」と考えるでしょう。しかし葉酸は「造血ビタミン」とも呼ばれ、ビタミンB12と共に摂取することで血液の元になる成分を生成しています。

したがって子宮筋腫による貧血予防のためには、鉄分と共に葉酸サプリメントを摂取しましょう。

また、子宮筋腫による妊娠合併症のひとつに常位胎盤早期剥離があることを記しました。実は、葉酸が不足すると常位胎盤早期剥離のリスクが高まるといわれています。

つまり、子宮筋腫がある場合は常位胎盤早期剥離のリスクを下げるためにも葉酸が必要と考えられます。子宮筋腫を持った女性が葉酸を摂取するメリットは他にもたくさんあります。

・葉酸によって妊娠しやすくなる

また、葉酸は「妊娠しやすい体を整えるサポート」を行います。

葉酸の造血作用(前述した血液の元となる成分をつくる)によって、循環する血液が増えて血行が良くなります。また、DNAやRNAなどのタンパク質合成を促すことから、正常な細胞分裂へ導くことができます。

このような葉酸の作用によって子宮の状態が良くなり受精卵が過ごしやすい環境になることが期待できるのです。

また、デンマークで行われた調査によって「葉酸摂取によって月経不順時の妊娠率を上げる」という結果が報告されています。

この調査は、葉酸のサプリメントを摂取していた女性と、服用していなかった女性が一定期間に妊娠した割合を比較したものです。

その結果、葉酸サプリメントを摂取していた女性の方が妊娠率は1.15倍高いという結果でした。さらに、月経不順の女性を比較すると、葉酸摂取群の女性の方が妊娠成立の割合が1.35倍高かったことを示していました。

子宮筋腫があっても葉酸を服用できるのか

なお、そもそも葉酸サプリメントを服用することによる子宮筋腫への影響はあるのでしょうか。

これについては、国立健康・栄養研究所が「葉酸の摂取が増えることで子宮筋腫の発生率を高めることはない」と結論を述べています。実際、ホームページでは葉酸が子宮筋腫に与える影響について、以下のように記載しています。

葉酸と筋腫に関する研究は、残念ながら見つかりませんでした。米国では、1994年以来穀類製品100gあたり40μg(0.04mg)の葉酸が添加されていますが、現在までに筋腫の発生率が上昇しているということは報告されていないようです。

このように、葉酸の摂取によって子宮筋腫が増えたり大きくなったりするといった影響は見られないと考えられます。

葉酸サプリメントが子宮筋腫の悪化に関与せず、むしろ合併症のリスクを下げたり、妊娠しやすい体を整えるサポートを行ったりすることから、葉酸を摂取するメリットは大きいといえます。

子宮筋腫を大きくしないために気をつけるべきこと

なお、子宮筋腫はそのまま成長せず何も身体に影響を与えないこともあれば、突然大きくなることもあります。

前述した通り、子宮筋腫の原因は解明されていないので「こうすれば子宮筋腫の成長を防げる」と、具体的に提示することはできません。

しかし、子宮筋腫に影響を与える可能性を除外することが重要となります。そのためには、以下のようなことに注意しましょう。

食生活

子宮筋腫を大きくさせない対策として「乳製品(牛乳・チーズ・バターなど)」と「動物性の脂っこい食べ物(鶏の唐揚げや焼き肉など)」を控えるようにしましょう。

乳製品や脂っこい食事が子宮筋腫に影響するというデータは得られていませんが、これらの食べ物は体内で炎症物質の材料になるため控えた方が良い食品と一般的に言われています。

また、子宮筋腫の患者さんの多くが乳製品や脂っこい食事を好んで食べる傾向にあると言われています。

特に、日本人は牛乳を含め、乳製品に含まれている乳糖を体質的にうまく分解できないといわれています。その割合は 80~90%とされており、カタラーゼ(乳糖分解酵素)をうまく作れないために起こります。

このとき、乳製品を分解できない体質(乳糖不耐症)であれば、うまく分解できなかった物質がアレルギー物質になる可能性すらあるのです。下痢を生じたり、乳製品のカゼインがアレルギー症状を引き起こす原因になったりします。

乳製品や脂っこい食事の場合、体内で分解されにくいので負担をかけてしまいます。乳糖によって分解が遅いのは既に述べた通りです。脂肪分の多い食事についても、胃での滞在時間は 4~5 時間(通常は 2~3 時間)となります。

実際に子宮筋腫で手術を受けた私の友達は、非常に偏食で揚げ物と牛乳が大好きでした。手術で摘出された筋腫は30個以上だったようです。

子宮筋腫のある方は乳製品・脂っこい食事を避けるようにしましょう。

このとき、日本人である私たちの体に合った和食を中心とした食生活を送るといいです。パンやパスタ・フライドポテト・ハンバーガーといった欧米から入ってきた食事を控え、バランス良く野菜・肉・魚を摂ることが適しています。

体を冷やさない

子宮筋腫に限ったことではありませんが、女性でも特に妊娠を望んでいる女性は子宮の周りを絶対に冷やしてはいけません。

体が冷えると血の巡りが悪くなり、ホルモンや栄養素が必要なところにきちんと届かなくなって妊娠力にも影響を与えてしまいます。

また、体が冷えると痛みを生じることがあります。生理痛がひどい場合は体を温めるだけでも痛みが和らぎます。体を温めるように心がけましょう。

気をつけるべきポイントは以下の4つです。

・お風呂はシャワーで済まさない

毎日湯船にゆっくり浸かることで血液の流れが良くなります。また、湯船で体を温めることは血液を温めることにつながります。

その他にも、湯船に浸かることでリラックス効果や美肌効果、免疫力の向上などうれしいメリットがあります。

忙しいとつい「シャワーでいいか」と湯船に浸かることをパスしてしまうこともあるかと思いますが、極力毎日浸かるようにしましょう。

・首、手首、足首を冷やさない

「3つの首」と呼ばれる首・手首・足首には太い動脈が通っているため、この部分が冷えると冷たい血液が全身に流れてしまいます。

「寒気を感じる」など風邪をひき始めのときも、首・手首・足首を温めることで風邪から体を守る効果があります。

普段から首や足が冷えないように、マフラーを巻いたりモコモコソックスや暖かいスリッパを活用したりする方は多いと思いますが、手首の冷え対策は見落とされがちです。

私は上の写真のようなアームウォーマーを活用しています。家にいるときやオフィスなどでも手首を冷やさないように気をつけましょう。

・タイトな下着や服を身につけない

体のラインを良く見せるため、ファッションのためにタイトな下着や洋服を身につける方がいらっしゃると思います。しかし体を締め付けると血流が悪くなります。

体に負担のかかることは止めましょう。

・体を冷やす食べ物や飲み物を控える

清涼飲料水やアイスなどの冷たい食べ物は体を冷やします。

また、きゅうり・トマト・ナスなどの夏野菜は体を冷やす作用があります。夏野菜は水分が多く含まれているため、体にこもった熱を下げる働きを示すのです。

同様にバナナやマンゴー、スイカなど南国で採れる果物類も体を冷やします。南国の暑い場所で生息するために果物自体に水分が豊富に含まれているのです。極力体を冷やす食べ物は控えるようにしましょう。

一方で、夏野菜とは対照的に冬野菜の代表ともいえる根菜類は体を温めます。その理由として、水分が少ないことに加え、「血行を促進する作用」「血液をつくる、たんぱく質の働きを高める作用」などが挙げられます。

そこで、カブや人参を使ったスープをつくって体を温めましょう。

また、体を温める作用のある食材の中でも特に妊娠中に摂ると良いとされているのが生姜とお酢です。これらには血行を促進する働きがあるため体全体が温まります。

生姜をたくさん使った炊き込みご飯や酢の物などを食事に取り入れて積極的に摂るようにしましょう。

まとめ

子宮筋腫は誰でも生じる可能性のある病気です。

子宮筋腫があっても妊娠は望めますし、筋腫の場所や大きさにもよりますが通常の妊婦と同じように出産することも可能です。

必要以上に心配し過ぎるのは良くありません。ただ、様々な合併症のリスクを伴うことは確かです。特に子宮筋腫で母子共に命の危険が及ぶ常位胎盤早期剥離には注意が必要です。

葉酸が不足していると常位胎盤早期剥離のリスクがさらに高まるため、子宮筋腫を伴った妊娠の場合は葉酸を摂取しておきましょう。

葉酸サプリメントの服用によって全てのリスクを回避できるわけではありませんが、不安要素を少しでも減らすことは可能です。葉酸サプリメントで子宮筋腫によるリスクを低減すると共に妊娠しやすい体づくりを目指しましょう。